2016年夏季五輪の開催都市は、ブラジルのリオデジャネイロに決定。「環境五輪」を掲げた2度目の東京大会は幻に終わった。敗軍の将となった石原慎太郎・東京都知事の求心力低下が予想される。しかも、新銀行東京や築地市場の移転問題など、難題が山積している。暗雲垂れ込める石原都政の行方を追う。
「東京にオリンピックが来なくてよかった、で終わりではありません。オリンピックそのものをしっかり考えるべきだと思います」
こう語るのは、福士敬子・東京都議会議員(市民派無所属)。東京五輪の招致に反対し、国際オリンピック委員会(IOC)の総会が開かれたデンマークのコペンハーゲンに足を運んだ。商業主義化された五輪の実態と、招致理由に国威発揚などを掲げた石原慎太郎都知事の考え方、さらに、多額の税金が投じられることなどへの疑問からだ。
東京はおおかたの予想どおり落選し、2016年夏季五輪の開催地はブラジルのリオデジャネイロに決定した。04年、12年大会の招致レースでは一次選考で敗れたリオが、3度目の挑戦での勝利。南米大陸初の五輪開催となり、しかも、08年北京、14年冬季のソチ(ロシア)に続く、経済成長の著しい新興4ヵ国(BRICs)での開催となる。世界各地に開催地が広がる傾向にある。
投票結果で意外だったのは、一時は本命視されたシカゴが最下位に終わった点だ。世界における米国の地盤沈下を象徴する展開ともいえる。そして、最も存在感が希薄だったのは「環境五輪」をうたった東京だ。五輪用に蓄えた4000億円の基金をアピールし、招致活動に150億円(公称)ものカネをつぎ込んだものの、1回目の投票で獲得したのは22票。2回目の投票で2票減らす珍しい負け方で終わった。相手にされていなかった感が否めない。
そうした思いを抱いたのだろうか。石原知事は帰国後の記者会見で「目に見えない非常に政治的な動きがあった」と語った。この発言は即座にブラジルに伝わり、物議を醸す事態となった。