論文を読むのが日課という「めんどくさいお医者さん」、東京大学病院の地域医療連携部にいる循環器専門医・稲島司氏。世に流布する「健康的なイメージ」と、科学的「効果が証明されたもの」を区別するための方法を提案している。
夏目 最近、製薬業界の本を読んでいますが、新薬をつくれる国って日本を含め世界10ヵ国しかないんですね。基礎実験から始まって、効果があるかどうかはもちろん、副作用の有無まで、非常に厳しい検査をくぐり抜けなければ承認されない。
稲島 医薬品の効果は厳密さを要求されます。例えば、プラセボを使ったダブルブラインド・テストを行うなどです。
夏目 プラセボって、偽薬のことですよね。
稲島 そうです、ヒトの体って不思議なもので「薬ですよ」と言われると、ニセモノでも症状が改善されることが実際にあるんです。だから効果を検証する時は、実薬を投与したグループと、プラセボを投与した、対照となるグループをつくり、双方の結果を比較します。
稲島 また、被験者は2つのグループに「ランダマイズ(=無作為)」に割り付けます。さらに、被験者も試験をする人間も、飲んだのが実薬かプラセボかわからないようにする必要があります。これを「ダブルブラインド(二重盲検)」と言います。医師も「この人、プラセボなんだよなぁ」などと思っていたら態度や結果の解析に影響に出てしまうこともありますからね。
グルコサミンで
関節痛は改善するの?
稲島 「ランダマイズ」された「ダブルブラインド」の「プラセボ対照試験」は、例えばこの試験などがそうです。
稲島 これはオランダのライデン大学で、222人の女性患者を対象に、ランダムにグルコサミン1500mgとプラセボに割り付けて飲んでもらって、24ヵ月追跡調査をしたものです。