「第2スエズ運河」開通!<br />エジプト経済再興の陰に“剛腕大統領”の存在ささき・よしあき
1947年岩手県生まれ。拓殖大学商学部卒業後、リビア大学神学部を修了、埼玉大学大学院経済学科で修士号を取得。トルクメニスタンインターナショナル大学名誉博士号を受ける。現在は、日本経済団体連合会21世紀政策研究所ビジティング・アナリスト、笹川平和財団特別研究員。著書に『革命と独裁のアラブ』(ダイヤモンド社)『ジハードとテロリズム』(PHP研究所)など多数。

 『アラブの春』の革命劇によりムバラクが大統領の座から引きずり降ろされたエジプトでは、イスラム原理主義のムスリム同胞団を支持母体とするムルシーが新大統領に選出されたが、内政外政におけるさまざまな失敗を受けて反政府デモが展開され、2014年6月、前国防相のシーシが新たに大統領の座に就いた。エジプト陸軍士官学校卒の、軍人上がりの大統領だ。彼はコーラン全章を暗誦できる敬虔なるイスラム教徒だとされ、その穏やかな表情と語り口でエジプト女性の人気を集めている一方で、独裁的に強硬な政策展開を実行する剛腕政治家である。

 シーシ政権にとって最大の敵であるムスリム同胞団に対しては、同組織の資産凍結による活動の沈静化を進めただけでなく、ムスリム同胞団幹部に対する裁判では容赦なく多数の死刑判決を下している。

 IS(イスラム国)に対しては、エジプトの国益に直接的な影響を及ぼすリビアでの展開に対していち早く空爆を敢行しているし、またリビアの全部族長会議を主催して、リビア国民による解決を支援している。さらにはISとも関係が深く、エジプト領内であるシナイ半島北部で暴れまくるアンサール・バイト・ル・モクデスに対しても徹底的な対決を決断している。そこには何のためらいも見られない。

 ご存じのように、世界にはいま「民族主義」「排他主義」の嵐が吹きすさんでいる。ヨーロッパ、アメリカ、中国、ロシア、そして日本も決して例外ではないだろう。

 そんな弱肉強食の時代にあって、求められるのは強権の指導者である。従来のような「民主」「平等」「平和」を前面に押し出した全方位型の指導者では、その国家は他国に押しつぶされてしまう危険性をはらんでいるはずだ。

 ただし、民族主義、排他主義を謳う指導者であっても、ただ闇雲に突っ走るだけではやがて頓挫することは、過去の歴史が証明している。世界の潮流を冷静に見渡した上で自国の状況を的確に判断し、果敢に行動する指導者でなくてはならないということだ。

 シーシ大統領はまさに、その要求に応えられる剛腕の政治家である。

 シーシ大統領は強硬な外交政策を推し進めながら、内政面では1億人のエジプト国民の未来につながるいくつもの巨大プロジェクトを推進している。その根幹となっているのは、投資規制の緩和策とインフラ整備プロジェクトを重要視する施策だ。そのためシーシ政権誕生の直後から外資が流入して経済状況は好転し、欧米の格付け会社もエジプト経済を高く評価している。

 シーシ大統領は、第2スエズ運河の建設以外にも、『新首都の建設』『カイロ旧市街の大改修計画』『アフリカ縦断道路の建設』といった巨大プロジェクトを矢継ぎ早に立案・実行しており、彼が率いるエジプト経済には大きな可能性を感じさせられる。

 次回は、『新首都の建設』についての話題を中心に、エジプトという国家が内包するポテンシャルを改めてお伝えしよう。