「お墓が足りなくなり、永代使用料も高騰する」と騒がれている。果たして、本当にそうなのか。ダイヤモンドQ編集部が需要と供給の動向を探った。

 国の推計では、全国で1年間に亡くなる人は2015年が約131万人で、40年には約167万人になりピークを迎える。60年でも約153万人おり、多死時代が続く。この推計はお墓の潜在需要そのもので、各地で「お墓不足」が議論され始めている。

 お墓はどれだけ必要になり、供給されるのか。早稲田大学の浦川道太郎教授を代表研究者とするチームは15年3月、お墓需要の長期予測をまとめた(下図参照)。全国では30年ごろまで年間45万~55万基規模の需要が発生するが、以後は急激に減少し、50年以降はなくなる。人口が減り、既存世帯の墓所に入ることで足りるというわけである。

 ただ、地域によって違いがある。秋田県は35年、他の東北各県でも40年以降はゼロになる一方、東京都や神奈川県は同年以降も年間2万基以上の需要がある。予測を取りまとめた公益社団法人全日本墓園協会の横田睦・主任研究員は、「5~10年後、全国でお墓不足が顕在化する恐れがある」と警告する。

 深刻といわれているのが東京都。08年の東京都公園審議会による答申「都立霊園における新たな墓所の供給と管理について」では、年間2万基程度(答申当時)、28年には約3万基の需要があると見込んでいる。だが、都内で供給されているお墓は当時で年間6000基程度。まだ既存の空いている墓地はあるものの、いずれ不足して、近県にある民間霊園のお墓を購入するか、自宅に遺骨を置く「手元供養」を余儀なくされる可能性がある。

不明の供給実態

 このように以前からお墓不足が指摘されてきたが、不要論の根拠はあいまいだ。「需要予測はあるが、供給実態が分からない」と横田氏は指摘する。

 どういうことかというと、厚生労働省は、「衛生行政統計報告」で全国にある墓地埋葬法(墓埋法)で認可された墓地や納骨堂の数を集計しているが、それは「施設数」であり、利用できる数を示す「区画数」ではない。東京都のように独自に調査した自治体もあるものの、全国の供給力を示す基礎データがない。

 供給の実数が不明なのだから将来、お墓が不足するかどうかは、誰も分かっていないのだ。