長期的に見てこれは、イランの原油生産量が着実に増加していくことを意味しています。当然のことながら、原油価格に与える下落圧力は相当なものになるだろうと考えられます。

 ところが、イランの原油価格に与えるインパクトは、原油の増産にだけあるわけではありません。意外に知られていないことなのですが、イランは天然ガスの確認埋蔵量ではロシアを上回って世界1位であるのです。

 エネルギー価格の動向は、原油なら原油だけ見ていればいいというものではなく、天然ガスや石炭なども含めて、エネルギー全体の総量で見る必要があります。

 というのも、エネルギー資源には互いに代替性があり、たとえば天然ガスが安くなれば、原油の代替用としてのガスの需要が高まるし、石炭価格が安くなれば、石油からの代替需要が新興国中心に高まるという性格を持っているからです。

 ですから、原油、天然ガス、石炭など、全体のエネルギーの供給と需要を考えなければ、エネルギー価格の動向を見誤ることになってしまいます。

 2014年以降の原油価格の下落では、それ以前にアメリカ国内で天然ガスが安くなり、エネルギー価格全体に下落圧力が働いていました。そこにアメリカのシェールオイル生産量の急増が重なって、WTI原油価格が下落の一途をたどるようになり、それに引っ張られるように北海ブレントや中東ドバイ産の原油価格も下がっていったのです。

 エネルギー全体の供給力から見たとき、イランの重要性は原油の埋蔵量が多いというだけでなく、未開拓の天然ガス資源がそれ以上に大きいということです。5年先になるのか、10年先なるのかはわかりませんが、イランに原油はもちろん、天然ガスを輸出するためのインフラが整えられれば、世界のエネルギー価格に大きな影響を与えることになるでしょう。

――核問題についての最終合意というのは、中東の小さな外交問題にすぎないと思っていましたが、エネルギー価格を通じて世界経済にも大きな影響を与えますね。

中原 かつてはエネルギー価格が高騰し、2008年7月には1バレル150ドル近くにまで上昇しましたが、もはやそのようなことが起こることはありません。150ドルどころか、100ドルを超えることなど、もう二度とないでしょう。