日本が読み違えたTPP合意先送りの悪い影響大筋合意ができなかったTPP閣僚会合後の記者会見で、渋い表情を浮かべる甘利明TPP担当相 Photo:REUTERS/アフロ

「大筋合意の確率は70%」。甘利明TPP担当相の読みは甘過ぎた。7月末からハワイで開催されていた環太平洋経済連携協定(TPP)の閣僚会合は、合意に至らないまま閉幕した。

 甘利大臣が読み違えたのは、“伏兵”の存在を軽く見ていたからだ。「日米交渉がまとまれば、あとは何とか決められると考えていたのではないか」(菅原淳一・みずほ総合研究所上席主任研究員)。

 ところが、ふたを開けてみると、ニュージーランドが日米などに乳製品の輸入拡大を求めて強硬な姿勢を最後まで崩さなかった。

 自動車や自動車部品の交渉では、日米では関税撤廃で合意する方向で進んでいたが、メキシコとカナダが原産性基準(TPP圏内で一定の付加価値比率を累積で満たせば圏内原産と認定される基準)について、日本が主張する40%台では小さ過ぎるとして反対し、交渉が難航したといわれる。

 また、医薬品の新薬承認に必要なデータの保護期間でも折り合いが付かなかった。

TPP漂流の可能性も

 今回の大筋合意が先送りされたことで、TPPが漂流する可能性も出てきた。来年に大統領選挙を控える米国の政治日程が厳しくなってきたためだ。