テーマパークの成否を握るカギは
市場での感覚を研ぎ澄ますこと

 既存のブランド価値を元手に徹底したブランディング戦略をすることで、日本のテーマパークビジネスのトップを走り続けるTDLと、一度は既存のブランディング戦略を放棄した上で、徹底した来園者目線のマーケティングを実施し、そこで生み出したキャッシュによりブランド価値を向上させ、復活を遂げたUSJ。この違いは、それぞれのブランドを握る「本家」との関係性にありそうだ。

 TDLを運営するオリエンタルランドは、米国のウォルト・ディズニー・カンパニーと厳密なライセンス契約を締結しているが、USJを運営するユー・エス・ジェーは、米国のユニバーサル・スタジオと資本関係のない自由な関係性を保っている。そのため、日本の漫画やゲームを題材にしたアトラクションなどの施策を、思い切って打ち出すことができた。

 不人気のテーマパークが淘汰され続ける流れの中で、今後不況に喘ぐパークの教訓となり得るのは、おそらく後者のビジネスモデルだろう。B to Cのビジネスモデルにおいては、常に消費者が変化をするからこそ、企業にも柔軟な姿勢が必要になる。しかし、2000年初頭にかけて次々と閉鎖された全国各地のテーマパークを振り返ると、当初のコンセプトにこだわるあまり、消費者、つまり来園者の変化に鈍感であった結果の閉園と思われるケースが散見される。

 長崎県のハウステンボスは世界有数のバラ園やイルミネーションで、宮崎県のシーガイアはスパリゾートと将来のカジノ誘致で、福岡県のスペースワールドは教育機関からアトラクションメインの遊園地へとビジネスモデルを変えることで、何とか生き残った。閉園してからでは何も始まらない。まずは消費者目線で核となるビジネスを見直し、ブランドはそれから向上させればいいのだ。

 テーマパークビジネスの成否を握るのは、消費者にリピートされるかどうか。どれだけコンセプトが素晴らしくても、お客が一度来園して満足してしまう内容だと、遅かれ早かれ事業の継続は困難になるだろう。来園者の「また来たい」と思える需要、そしてそれに見合う価値を生み出し続けることが大切であり、それを可能にするのがUSJに見る徹底的な来園者目線のマーケティングなのだろう。

 冒頭で挙げた4Dシアターではないが、デジタル技術が進歩すれば消費者が屋内で体験できることの幅はますます広くなる。テーマパークなどのレジャー産業は、「可処分時間の奪い合い」という意味において、時と場所を選ばずにユーザーが時間を潰せるインターネットも強力なライバルになる。既存の概念を軽やかに超えて移り行く消費者のニーズを把握するには、自らもまた消費者として、市場の中で感覚を研ぎ澄ます必要があるだろう。

 苦境の時期の教訓を忘れることなく、こうした「研ぎ澄まされた感覚」を持ち続けられるかどうか。USJが再上場後も快進撃を続けられる条件は、まさしくそこにありそうだ。