どんな人でも、いやいや会社に行くよりも、会社にいるのが楽しくてイキイキと働くことができたほうがいい、と思っているに違いない。経営者の立場だったら、すべての社員が当事者意識をもって、仕事に主体的に取り組んでもらいたいと願うだろう。しかし実際は、イキイキと仕事に取り組んでいる社員は少なく、社員のやる気をうまくマネジメントできていない企業も多い。変化と複雑性が増した現在において、時代に合わせたワークスタイルの変革が求められている――。
ここ十数年、多くの企業は効率化に邁進。数値管理を強化し、組織の中の余裕といった遊びの部分を削ぎ落としてきた。特に、結果の数字だけで社員を評価していくタイプの成果主義を導入した企業は、日本企業の強みであった、チームとして協力し合う文化を破壊。「心」と「仕事」が切り離され、職場での働きがいを感じなくなってしまった社員を多く生み出してきたといえる。
高間邦男(株式会社ヒューマンバリュー 代表取締役) 人材コンサルタント。明治大学商学部卒。産業能率大学総合研究所勤務後、1985年株式会社ヒューマンバリュー設立。企業のニーズに合わせて研修システムや変革プロセスを協働開発し、企業内で実施。1966年から「学習する組織」についての研究調査を行ない、現在はポジティブアプローチでの組織変革の手法を紹介している。主な著書に、『あなたの中の「変える」チカラ』(ダイヤモンド社)、『組織を変える「仕掛け」』(光文社新書)などがある。 |
『ハイブリッド社員』
という新しい働き方
では、多くの人がイキイキと働き、幸せに生きるにはどうしたらいいのか――。その答えを探すヒントのひとつになるのが、『ハイブリッド社員』という新しい働き方だ。これは、人材コンサルタントの高間邦男氏が、近著『あなたの中の「変える」チカラ』(ダイヤモンド社刊)の中で紹介。変化と複雑性が増した現在において、注目すべきワークスタイル変革のカタチである。
では、『ハイブリッド社員』とは一体どういうものなのか? それは、ガソリンエンジンと電気モーターの両方で動くハイブリッドエンジンのように、心のエンジンから仕事のエンジンにベルトが掛かり、両方のエンジンが一緒に回り始めた状態のこと。公私をポジティブに融合し、仕事で自分の想いを叶えていく人たちのことを指す。そしていま、こうした『ハイブリッド社員』が企業の中で増えてきており、さらに彼らが組織変革の大きな原動力になっているケースもあるという。
山下 徹(株式会社NTTデータ 代表取締役社長) 1947年神奈川県生まれ。1971年東京工業大学工学部卒業後、同年日本電信電話公社入社。1988年のNTTデータ通信株式会社(当時)分社以降、開発本部企画部長、産業営業本部長、ビジネス開発事業本部長、経営企画部長などを歴任、代表取締役副社長執行役員を経て2007年より現職。 |
『ハイブリッド社員』たちに共通する「仕事で自己実現がしたい」――そうした想いを企業はどうとらえ、どうマネジメントしていけばいいのか。そこで、企業トップの代表として、NTTデータの山下徹社長にお話をうかがった。
同社ではまさに、『ハイブリッド社員』たちによる、ボトムアップ型の企業変革が起きているという。人材コンサルタントの高間邦男氏との対話から、ワークスタイル変革のあり方と組織の未来像について語ってもらった。
【対談】高間邦男氏×山下徹氏
高間●拙著『あなたの中の「変える」チカラ』の執筆にあたり、『ハイブリッド社員』が変革を起こしている実体をさぐるため、いくつかの企業に取材を行ない、その中で御社社員の方々にもインタビューをさせていただきました。