消費性向が示すように年金生活者の家計収支は毎年拡大している。次のグラフは、夫が65歳以上の無職の高齢者夫婦の家計収支の推移である。収支結果は、この連載の第16回でも取り上げ、その際「年間収支の赤字額は3年前より20万円拡大!」と書いたが、2014年の最新データでは赤字額は前年よりさらに5万円増え、年間マイナス74万円にもなる。

 赤字がどんどん増える原因を知りたい。家計調査年報だと、毎年の詳細なデータがわかるが、それぞれの項目についての推移を知ることはできないので、エクセルに毎年の調査結果の数字を入力して分析してみた。

 過去10年分の数字を並べてみた結果、最も影響が大きかったのは年金収入の減少だ。支給額は10年前に比べて約10%減っている。意外だったのは、消費支出は10年間ほぼ横ばいであったこと。年金収入が減り続けても、暮らしぶりはそう簡単に変わらない、変えられないということだろうか。

 調査では「非消費支出(所得税・住民税、健康保険料・介護保険料)」が、思ったより増えていないことが疑問である。私の試算だと、年金生活者の税・社会保険料は確実に負担が増している。

 調査項目には「額面の年金収入」「非消費支出」「消費支出」がそれぞれあるが、介護保険料や後期高齢者の健康保険料は年金から原則天引きのシステムのため、天引き後の年金を「額面の年金収入」だと思って調査シートに記入しているのかもしれない。天引きされる保険料は毎年のように上がっているし、自治体によっては年金から住民税を天引きするところも出てきているので、「年金の振込額=額面の年金収入」と思い違いをして記入すると、「非消費支出」の増加が隠れてしまう。「専門知識のない高齢者が大量のアンケートを「正確に」回答するのは、まず無理だろう。

 いずれにせよ、家計収支の赤字拡大の要因は、年金の手取り減少が大きな要因であり、消費支出額が増え続けているわけでないことがわかった。