中小企業はチームワークが命
成果主義だけではムードを壊す

 中小企業で成果主義の色が濃い制度を導入すると、モチベーション的にも逆効果になりかねません。2009年頃、福岡市で美容・健康食品加工販売を展開するハーブ健康本舗で、人事評価制度の改革プロジェクトを始めた当初、永松靖浩社長が頼りにする企画部門のリーダーがこんな風につぶやきました。

「こんな制度はきっと失敗しますよ」

 彼の言葉の裏には、以前在籍していた会社での苦い経験がありました。

 まさに成果重視型の人事評価制度を採用した結果、社内の雰囲気がむしろ悪くなって、退職者が続出。会社の業績まで悪化してしまい、制度の運用を辞めてしまったのだそうです。大手と異なり、少数精鋭のチームワークが命とも言える中小企業では、成果主義導入でムードをぶち壊して業績にまで響くリスクすらあるのです。

 しかし、会社のテコ入れが必要な局面ではありました。通販業界では「10億円の壁」が存在するそうですが、当時の売り上げは5億円にも届いていませんでした。永松社長は「10億円の壁を突破するには現状では不可能だ」と危機感を覚え、優れた人材を確保・育成することを急がねばならないと考えていました。そこで人事評価制度の改革に踏み切ったわけです。

 そして、人材育成のあり方を模索・情報収集する中で、永松社長は「クレド」に目をつけます。

クレドで会社の理念を従業員に共有
あとはどう日々の業務に反映するか

 クレドとは、会社の価値基準や行動指針を明文化したものです。日本では2007年、米系高級ホテルの「ザ・リッツ・カールトン」が東京に開業した際、同社の従業員が「心のこもったおもてなし」等を誓うクレドを携行していることで注目され、その後、京セラ名誉会長の稲盛和夫さんがJALの経営を再建した際にも導入したことで知られています。

 ハーブ健康本舗でも永松社長自ら考え、22ヵ条から成るクレドを完成させます。条文を掲げただけでなく、ていねいな解説を加え、わかりやすいものを配布したはずだったのですが、実践に結びつけるまでには至りませんでした。