筆者は2012年に「マスコミが報じない「いじめ自殺問題」の伏魔殿 解決策なき世論の過熱は、なぜ繰り返されるのか?」という記事を書いた。この末尾に「いじめ自殺問題は、子どもから全ての大人に突きつけられた課題」「10年後に同じことが繰り返されているならば、今の大人が、行なうべきことを行なわなかった証拠」と書いたが、あれから3年経った今、世の中が何か変わったようには思えない。

 当時は、2011年に起こった大津市中2いじめ自殺事件がマスコミを賑わせていた。被害者と加害者、いじめの具体的な内容はもちろん違うが、教育委員会や学校関係者、マスコミなど大人たちが「いじめ問題」について具体的な対策や方針を示せていない点は、3年前から変わっていない。特に、マスコミの間では「いじめを受けている君へのメッセージ」などと題して、教育問題の専門家でもない有名人のコメントを載せることがブームになっているようにも見える。それらの感動的なメッセージはSNSですぐに拡散するが、なかには専門家が首をかしげるような、曖昧で、ときには有害ですらあるメッセージが含まれることがある。

 今回は、「年間で子どもの自殺が一番多い」と言われるこの時期において、いじめに関するマスコミ報道について取り上げる。いじめ問題が取り沙汰されるたびに報道が過熱するが、その中に意味のある報道はどれほどあるのか。マスコミは何を報じることが求められているのだろうか。

真実を暴く一方偏見もまき散らす
遺族が明かすマスコミ報道の明暗

「定期的と言って良いほど大変多くのいじめ報道があります」と話すのは、NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事で、『わが子のいじめ自殺でわかった 今、子どもたちと教師に起きている本当のこと』(WAVE出版)などの著書を持つ小森美登里氏。小森氏は1998年に、当時高校1年生だった一人娘・香澄さんをいじめ自殺によって亡くした。

「4年に1度」と言うのは、子どものいじめ自殺問題についての報道過熱が起こるペースだ。確かに「定期的」という言葉を使いたくなるほど、繰り返しいじめ自殺の問題は報じられ、過熱し、そして忘れられてきた。何度報道が繰り返されても、いじめ問題はなくなっていない。

 小森氏にマスコミ報道の問題点について聞くと、こんな答えが返ってきた。

「実際に起きたいじめ自殺事件を取材してくださるマスコミの方には感謝しています。出さないでほしいと言えば被害者の名前を報じないでくれますし、約束を守ってくれます」

 いじめ自殺事件でも、被害者の名前が報道される場合とそうではない場合がある。報道されない場合は、被害者遺族がそれを拒否しているからだ。小森氏は、いじめ自殺で子どもを亡くした遺族たちに「マスコミの協力を得ること」をアドバイスするという。