原発の安全対策に豊富な経験を持つ
米専門家は日本の現状をどう見るか
東日本大震災による東京電力・福島第一原子力発電所事故の翌年の2012年9月、東電に「原子力改革監視委員会」が設置された。国内外の有識者から構成されている諮問機関で、東電が「世界最高水準の安全意識と技術的能力、社会との対話能力を有する原子力発電所運営組織」に脱皮できるよう助言を行ってきている。
8月25日、この監視委の委員長のデール・クライン氏、福島第一原発の汚染水対策などに関して様々な助言を行ってきたレイク・バレット氏と、個別に対談させていただく機会を得た。クライン氏は、米国の原子力規制委員会(NRC)で2006~09年に委員長を務めた。バレット氏は、NRCの元幹部で、1979年に米国で起こったスリーマイル島(TMI)原発事故の現地対策ディレクターとして、規制関係業務を指揮した経験を持つ。
今回、両氏には、(1)福島第一原発・汚染水問題、(2)原発「40年ルール」問題、(3)原発ゴミ処分問題、(4)今後の原発再稼働の見通しなどに関して御意見をうかがった(以下は、個別に行った対談をまとめて記述したものである。聞き手は筆者)。
トリチウム水は世界の原発で発生
取り扱いは難しいものではない
──福島第一原発のサブドレンからの「処理済み水」(トリチウムを含んだ水)は、ようやく地元漁連の了解を得て海への放出が行われる見通しとなった。世界の原発では、こうしたトリチウム水は発生しているのか。
クライン トリチウム水は、世界の全ての原発で発生している。どの国でも、これを安全に排出するための基準が策定されている。米国の場合、排出基準を満たすようにトリチウム水を希釈し、その後は川や海に流す。
政府や東電は、福島第一原発のトリチウム水にはリスクがあるのかないのか、人体に影響があるのかないのか、あるとすればどの程度のリスク、どのような影響なのか、国民に向けてきちんと説明していくべきだ。トリチウムは放射性物質ではあるが、低レベル。飲んだとしても、人体に蓄積しない。腕時計や非常口看板の蛍光塗料など身近なものにも多く使われており、取り扱い方は難しいものではない。