国と会社の年金の仕組みを
「知らない」ことが老後貧乏の始まり!

 読者のみなさんは、自分が将来受け取る年金額をご存じだろうか。年金額は知らない、そもそも年金の仕組みがよくわからない人が多数と思われる。

「知らない」より怖いのは「思い込み」だ。先日、バブル期入社の50歳くらいの知人と飲んでいたら、こんなことを言っていた。

「新入社員の頃、定年間際の上司が『うちの会社で働くと、年金を毎月40万円もらえるんだよ。君たちの頃は少し減るかもしれないけどね』と言っていたのが強く記憶に残っている。少し減っても月35万円くらいもらえるのかな。だったら老後は何とかなりそう」

 月40万円なら年480万円、月35万円は年420万円だ。厚生年金だけではあり得ない金額なので、念のため「それって会社の企業年金を加えた額ですね?」と尋ねてみたところ「よくわからない」とのことだった。

 仕組みを知らずに金額だけ頭に残っているのは、危険!と思ったのだが、お酒の席だったのでそれ以上突っ込んだ話をするのはやめた。

 その後偶然ではあるが、その知人が勤める会社の人が定年後の生活設計を立てるべく、私のもとへコンサルティングを受けにきた。予想通り、企業年金のある会社だったので、先の年金額は「国の年金+企業年金」のことであった。

 資料を見ると、その会社の企業年金は60歳から10年間の有期年金であった。つまり40万円とか35万円といった年金は70歳までしか受け取ることができず、その後は国の年金だけになる。これを「生きている限り受け取れる金額」だと定年間際まで思いこんでいたら、老後のプランが大きく崩れることになる。

 その会社では、運用率がバブル時期より引き下げられていて年金額は少なくなっている。さらに確定拠出年金制度が一部導入されたので、定年までに時間がある世代ほど、将来受け取れる企業年金の額が不確定になるそうだ。50歳の人にとっては「月40万円の年金」は幻の年金額なのである。