これまで数回にわたり、上司を味方につけるために必要な「コーチングアップ」の技術をご紹介してきました。しかし、実際にどのようにすれば上司を味方にでき、あるいはどういった態度が上司を敵に回してしまうのか理解するのは難しいものです。そこで、これから数回はケースを例に挙げ、適切な「コーチングアップ」の技術を説明していきましょう。
今回は、自分の有能さを示したい「独裁型」の上司から怒りを買い、さらに増幅させてしまったコーチングアップ下手な部下のケースをご紹介します。
上司のメンツを丸つぶし?
態度で損してしまう部下
某商社に入社して5年目、メーカーとの新商品開発の企画立案に携わる上原さん(27歳)。彼が書類整理をしていると、突然、星野部長代理(45歳)から内線が入り、すぐに会議室に来るよう呼び出しを受けました。声の調子から星野部長代理がかなり怒っているように感じたのですが、上原くんには思い当たる節がありません。星野部長代理のところに行くと、案の定、不機嫌そうにしています。
上原「星野さん、どうしました?」
星野「上原くん! どうしましたか、じゃないだろ。ルールを守ってくれなきゃ困るよ」
上原「えっ? 何ですか」
星野「例のプロジェクトの件だけれど、君、長嶋部長に相談に行ったそうじゃないか」
上原「はい。それが何か」
星野「そういう場合は、事前に、私に話を通してくれないとダメじゃないか。ついさっき、長嶋部長から『あの件だけどね』と言われたんだが、何も聞いていなかったから、大恥をかいたんだぞ」
上原「まずかったでしょうか」
星野「当たり前だろ。君は組織のコミュニケーションをなんだと思ってるんだ」