ただし、学歴にはやはりコンプレックスがある。だからこそ同世代には体験できないことをしようと、オフには高級レストランを食べ歩き、部屋にはブランド家具を並べては、「大卒には負けていない」ことを確認しているのだという。

 現在のようなスマホゲームアプリのバブルはそのうち弾けるだろうと思っているが、そのときはまた別の仕事をすればいいと割り切っている。学歴というものがスッポリと抜け落ちた心の空洞を埋められないまま、Aさんのソーシャルアカウントは美味しそうな料理やホームパーティーの写真でいつも賑やかだ。

 一方で、Bさん(28歳男性)は奨学金の返済を滞納している。Bさんの学歴はというと、国立理系大学を卒業後、大学院に進学、博士号を取得している成績優秀なポスドクだ。しかし、ポスドクの平均的な年収は大体300万前後であり、当然ボーナスも、社会保障もない。研究を続けながら、非常勤講師として週に2~3日学生の前に立つが、月収はこのアルバイトを加味しても手取りで20万円弱。毎月約3万円の奨学金を返済が正直苦しい。

 このまま研究を継続しても、教授への道がないわけではないが、狭き門で何年かかるかわからないとBさんは言う。もし他に職を探そうとすると、学部卒業後も奨学金の給付をもらい続けてまで取得した博士号は、むしろ足かせになる。

 覚悟の上で踏み出した研究者の道だった。しかし、それでも「貧困というのは自分とは無関係だと思っていた」とBさんは語る。そろそろ学生時代から住む都内のアパートを引き払い、実家住まいをする決断を下さなければならないが、「これまでの人生で挫折を経験してこなかった」と本人も言うように、差し迫った現状にもかかわらずその思考は停滞気味だ。

 日本では現在1万8000人のポスドクが就職浪人をしており、文部科学省は2009年に、国内で就職浪人中のポスドクを採用した企業に1人当たり約400万円の補助金を交付する大掛かりな制度を実施した。しかし、ポスドクの就労環境は依然として改善されていない。

自己評価の低い高学歴と高い低学歴
なぜ負の相関が生まれるのか

 もうひとりずつ、それぞれの実例を紹介したい。Cさん(30代男性)はIT/Web系企業の代表を務める低学歴リッチだ。いわゆる落ちこぼれの集まる高校に在学中「このままではダメになる」と感じてアルバイトを探す過程で、アフィリエイト広告の仕組みに出合い、自分でもサイト制作をするようになった。