「トキ米を魚沼産コシヒカリ以上のブランドにする」――。
新潟県佐渡市。日本海に浮かぶ、日本では沖縄本島に次ぐ面積を誇る島・佐渡島でこうした壮大な野心をもつ新たな「米のブランド化作戦」が進んでいる。
トキ米(正式名は『朱鷺と暮らす郷認証米』)という名を聞いたことがあるだろうか。
もちろんトキ米のトキとは、特別天然記念物として指定されながらも一度は絶滅し、人口繁殖の成功によって2008年から放鳥されている、あの朱鷺のことだ。そしてこのトキが自然界で生きていくために安心してエサを食べ、繁殖できる環境づくりをしていく一環で栽培されたコメが、トキ米ということになる。
実はこのトキ米、トキの初めての放鳥に合わせて08年から生産をスタートさせ、今年が3年目という若いブランドだ。だが、通常の米よりも3割以上価格が高いにもかかわらず、順調にファンを拡大し続けており、佐渡の「隠れたヒット商品」となっている。
トキ米の高ブランド化を目指す!
組織変革で臨む佐渡市役所の本気
さて、そんな“トキ米ブランド化プロジェクト”を主導する佐渡市役所では、さらなる高ブランド化、販売増を目指し体制を強化した。
これまで、トキはトキでも国による鳥の保護政策への支援はトキ共生・環境課、「トキ」ブランドの管理については農業振興課の管轄と、トキに関わる部署は数組織にまたがり、トキというブランドを一元的に管理することができていなかった。
こうした問題を解決すべく、今年4月よりトキに関するすべての組織を農林水産課に新設された「生物多様性推進室」に集約。そしてこの生物多様性推進室は、これまでバラバラに配置されていた生産振興係、生物共生推進係、生き物共生推進係、トキ政策係などをその配下に置く一大組織に変革したのである。
ではこのトキ米とは、いったいどんなものなのであろうか。現在のところ、トキ米に認定されるためには、4つの基準をクリアしなければならない。
1つは佐渡で作られたこと。佐渡島には、トキ保護センターがあり、トキ放鳥の拠点。なんといってもその佐渡で作られなければトキ米とは言えないのである。
2つ目は、新潟県から土づくりや化学肥料、農薬の低減技術に取り組む農業者であると認定された「エコファーマー」によって作られなければならない。
3つ目は、栽培期間中の化学肥料や農薬の使用量を5割以上削減すること。通常、佐渡の減農薬米は、3割の削減率。それを5割以上の削減へと基準が厳しくなる。