論文を読むのが日課という「めんどくさいお医者さん」、東京大学病院の地域医療連携部にいる循環器専門医・稲島司氏。世に流布する「健康的なイメージ」と、科学的「効果が証明されたもの」を区別する方法を提案している。
「よい油」と「そうでない油」
その構造の違いとは?
夏目 いやー、肉が焼けるにおいっていいですね!
稲島 あ、それ、私が焼いた肉ですよ。
夏目 あー、肉汁がジューシーだ! でも、油にもいろいろあるんですね。稲島先生は以前、何か「口にしない油」があるって話してませんでしたか?
稲島 ええ。コーヒーに入れるクリーム状の液体は口にしませんね。
夏目 あれって牛乳じゃないんですか?
稲島 はい、多くの製品では牛乳はまったく入っていないか、ほとんど入っていません。常温で長持ちするという点で疑問に感じますね。
夏目 …疑問に感じませんでした。でも油だから悪いってことにはならないでしょ?前回、EPAの豊富な青魚は心臓病リスクを減らす可能性が高い、ってデータを見せてくれたじゃないですか。同じ「油」でも、種類によって違うってことですか?
稲島 お!たまにはいいこと言うじゃないですか。その通りで、たとえばオリーブオイルはとても良い効果が確認されていますし、アマニオイルやエゴマ油も期待されています。「油」とひとくくりにするからいけないんです。「油は体に悪い」「油は体に良い」といったとらえ方は見直す必要がありそうです。
稲島 さあ、ここで図の登場です。今回は化学式です。
夏目 うん、わからない!
稲島 これは脂肪の化学式です。脂肪は効率的にエネルギーを蓄えられる物質で、炭素(C)が連なってできています。上下の図、いずれも炭素(C)がずらっと並んでいますよね。
夏目 なるほど、ここまではOKです。
稲島 化学式の右端を見てください。いずれも炭素(C)に酸素(0)が2つと、水素(H)が連なっている部分がありますね。この部分が「酸」になります。「脂肪」に「酸」がくっついているので、上下両方とも「脂肪酸」と呼ばれます。
夏目 ふむふむ。