Photo:Yoshihisa Wada

日本経営の良さは、本当に強さでもあるのか?

 自前主義による技術やシステム開発、平均点の高い製品へのこだわり、終身雇用制度などへの取り組みは、日本的なものづくりや経営の長所であると考えられてきた。しかし、グローバル化により環境変化の企業経営への衝撃度が強くなるにつれ、数々の長所がものづくりや経営の機動力を弱め、持続的な成長の足かせになっていると実感している経営者も多いはずだ。それがひいては、日本経済全体の復活をも妨げにもなっている。

 日本のものづくりを強くするために、今、何が必要なのか。経営者が肝に据えるべきは、「変動」「フレキシビリティ」というキーワードである。

 雇用における「非正規」(私は個人的にはこの言葉が嫌いで「有期雇用」と言いたい)の活用、業務プロセスの標準化を促すシステム利用などを進め、その一方で他社の追随を許さないダントツな製品やサービスそしてソリューションの創造に注力する。

 特に雇用における非正規社員の活用は、アメリカ的な個人に犠牲を強いるものではなく、日本的な経営の流儀を組み込んだハイブリッドな雇用形態の構築が求められている。

 この連載の1回目でも書いたが、コマツが2001年度決算で創業以来の営業赤字になった時、ファクト・ファインディングで徹底して、その要因を探った。まず生産コストを「変動費」に絞って比較し確認できたのは、当時の為替レート(1$=120円前後)のなかで日本の工場にはまだ十分なものづくりの競争力があり、1$=70円でも欧米のコストと戦える実力があるということだった。

 日本の製造コストを変動費に絞って比較するやり方が一般的ではない主な理由は、現場の雇用を仕事量に合わせて調整することが容易にできないことにあるように思うが、雇用調整できるできないは別にして変動費と固定費に分けて考えることは、問題の所在を見える化する上で極めて大事なことである。