だが、もしも混合診療が全面的に解禁されると、国民にとっては不利なことが多くなる。というのも、部分解禁と全面解禁は、保険診療と自由診療を併用できる点では似ているが、両者は全く異質のものだからだ。

 混合診療を部分的に認めた先進医療や患者申出療養は、あくまでも健康保険を適用するかどうか評価している段階の治療という位置づけだ。有効性と安全性が認められ、広く一般に普及できると判断されれば、健康保険が適用されて誰でも少ない自己負担で利用できるようになる。

 ところが、混合診療が全面解禁されると、「健康保険が使えるのはここまで」と線引きされてしまい、新しい治療法が開発されても健康保険は適用されなくなり、お金のある人しか医療の進歩を享受できなくなってしまうのだ。

 先進医療や患者申出療養なら、保険外の費用を全額自己負担するのは健康保険が適用されるまでの期間限定だが、混合診療が全面解禁されると永久に保険外の治療費を全額自己負担することになる。それどころか、健康保険で受けられる治療の範囲はどんどん狭められ、保険外の負担が増える可能性も出てくる。

 だからこそ、日本では混合診療は原則禁止の姿勢を貫き、安全性と有効性が確認された医薬品や治療は順次、健康保険に収載して、お金のあるなしにかかわらず、誰もが平等に医療を受けられる体制を作ってきたのだ。

 そして、意外に思うかもしれないが、混合診療の原則禁止は医療費の増加を防ぐ大きな役割も果たしている。

混合診療を全面解禁すると
公的な医療費も増大する!?

 混合診療を全面解禁すると、保険外の医療費が増加することで、健康保険など公的な医療費は抑制されると考えている人は多いのでないだろうか。

 だが、実際には保険外の治療の価格に引っ張られ、公的保障の医療費も上昇することは、医療を市場に任せたアメリカの状況から明らかになっている。

 経済協力開発機構(OECD)の「Health Data 2015」によると、2013年のOECD諸国の医療費の対GDP比率は平均で8.9%。これに対して、アメリカは16.4%でダントツ1位となっている。2位のオランダ、スイスが11.1%、3位のスウェーデン、ドイツが11.0%なので、アメリカ1国だけが突出して高い。

 注目したいのがその内訳で、民間保険が中心のはずのアメリカで、医療費の半分(7.3%)が公的支出で賄われているという点だ。