今回の、6月への前倒しでは、会社説明会による学生との接触開始から、事実上の内定(形は内々定)が可能な選考活動解禁までの期間が短縮される。多くの経団連企業の採用担当者にとっては、大規模なフライングの心配が減る分、昨年よりも安心なのではないだろうか。

 しかし、採用活動とはいえ、競争制限的な行為をしているのだから、日本の採用市場における、人材資源配分の効率性は大いに損なわれている。より自由な採用を行うようにした方が、学生は、より効率的に就職活動を行えるだろうし、評価の高い学生は、より良い条件を得ることができよう。

自由な採用ルールでの「青田買い」の勧め
企業にも学生にもデメリットは少ない

 参加企業が全て同じルールに従う場合、人気のある企業(主に有名な大企業)は、就職活動の時期がより短期間に集中してより後になる方が、評価の高い学生を確保する「採用ゲーム」において有利な立場に立つことができる。

 一方、それほど有利な立場ではない中小企業や、特に有能な学生を何としても(ルールを破ってでも)採用したいと考える「意識の高い企業」(正しい行為なので、敢えてそう呼ぶ)は、選考活動解禁の前に接触して、欲しい学生を確保しようとする。

 これを推し進めると、3年生時点、あるいは2年生時点でも、学生に個別に条件を決めて内定を出す、いわゆる「青田買い」が競争的に行われることになる。

 経団連のルールに縛られない採用活動を行うことで有名な、意識の高い企業の経営者に青田買いのデメリットを聞くと、「敢えて言えば、評価の精度が下がることだ」と教えてくれた。学生の素質の高低は、2、3年生の頃でも相当程度分かるが、遅くに選考する方が、評価の当たり外れが小さくなるという。自由に採用活動を行えるとしても、企業の側でも、「候補者を早く確保する」か、「ゆっくり評価してから決める」かの綱引きが働くので、青田買いが際限なく早まる訳ではない。

 また、自由な採用ルールの下だと、立場の弱い企業は、より早く学生を評価して採用を決めるリスクを負う必要があろう。さらに、より自由競争的になると、評価の高い学生に対しては、個別に好条件を出す必要が出てくる。