ある朝Rさんはトイレから聞こえる「痛い」という妻の叫び声で目を覚ました。妻は、背中に激痛を訴え、その場から動くことができなかった。救急車に乗りこむと、痛みで気を失いかけている妻が「赤ちゃんが…」とうわごとのようにつぶやいていた。

 検査後医師から意外な言葉が告げられた。

「骨粗鬆症による脊椎の圧迫骨折です」

 ダイエットとリバウンドを20年以上繰り返していた妻は、40代とは思えぬ骨密度だと指摘された。妊娠で増えた体重を支えられず脊椎が骨折してしまったのだ。医師の話によると絶食などの過激なダイエットを長期間繰り返していると若くても、稀に骨粗鬆症になるとのこと。信じられなかった。

妊娠中は母体の骨量が低下
ダイエットを繰り返す妻には注意を

 Rさんの妻は、整形外科医と産婦人科医の連携により無事出産した。長い不妊治療と骨折を乗り越えての出産に両家の家族も大喜びをした。しかし、それも束の間。Rさん夫妻を子育てという“地獄”が待ち受けていた。

 子供が小さいうちはよかった。しかし、1歳を過ぎて体重も10キロを越えてきたあたりから、抱っこをするたびに妻は腰痛を訴えるになった。骨粗鬆症は完治するものではない。Rさん夫妻にのしかかる骨折の恐怖。Rさんは大きくなる子供を抱きながら、妻のダイエットとリバウンドを繰り返した日々を思い起こして、後悔していた。

 腰椎や頸椎のトラブルに詳しい東京クリニックの脊椎専門外来の伊藤康信先生は、若い女性のダイエットと骨粗鬆症について、下記のように警鐘を鳴らす。

「この方の場合、過激なダイエットを繰り返したことにより年齢より早い骨粗鬆症が始まったと考えられます。

 妊娠中は、女性ホルモンであるエストロゲンやビタミンDなどが上昇するため、腸からのカルシウム吸収が増加します。ただし、カルシウムはお腹の赤ちゃんにいくために、母体の骨量全体が低下してしまいます。また、妊娠中は体重増加に加えてお腹をつきだしている姿勢により脊椎に負担がかかったと考えられるでしょう。

 骨粗鬆症の予防のため、女性の場合は40歳を過ぎたあたりから1年に1度くらい骨密度検査を受けることをお勧めします。当院では日本で初めての骨密度測定器を導入して検診に採用しています。これは、従来の骨密度測定装置より高精細・高画質を実現し、骨密度だけでなく、骨の形態や強度、骨の微細な変化を計測できるものです。特に若い時にダイエットを繰り返した方などは早めの受診をお勧めします」