広がりそうな若年者向け「投資教育」
ただし現在のやり方には疑問

高齢者の資産に不適切な運用が行われたり持ちかけられたりというケースはよく耳にする

 近時流行中の「教育の経済学」では、教育に対する投資は、対象者が若年である方が効率がいいとされている。教育というものの効果は、それを発揮する時間が長い方がトータルで大きくなりやすいから、定性的には、納得できる話だ。

 いわゆる「投資教育」にあっても、証券界をはじめとする金融業界は、小学校・中学校世代にも投資知識の普及を目指している。ビジネスを行う「元手(もとで)」としての資本と株式の役割を教えて、株式投資の意義を説くような教科書を小学生向けに作成し、講師を派遣するような金融機関もある。

 来年からは通称「ジュニアNISA」が始まることでもあり、実際にお金を持っている親やそのさらに親へのアプローチに本音の動機を置きつつも、子ども向けの投資教育には各方面から力が入りそうだ。

 もっとも、「ビジネス」や「お金」に関する知識を与え、経済感覚を養うことは早くからあってもいいと思うが、「利回り」「リスク」「割引現在価値」といった概念のない学童に向けて、株式投資の社会的意義だけを説いて、「あなたが応援したいと思う会社の株式を買ってみよう」と誘うのは、無理筋だと思う。

 投資は、あくまでも損得計算に基づいて、自分の判断で行うべきものだ。小学校5年生くらいになれば、出来の良い子は、割引現在価値と標準偏差くらいは、教えたら分かる(一方、残念な子は、大学生になっても分からないのが現実だが)。どうやら、中学生くらいが、投資の基本を教える適齢期ではないかと思う。

 ただし、家庭科でおざなりに教えるのではなく、数学のカリキュラムに初歩的な金融計算を組み込むべきだ。中高生に「投資」を教えても、彼らが実際に投資に回すことができるお金を持つまでには時間がかかるが、考え方の基本はこの時期に叩き込んでおきたい。