検討に時間がかかり、他社の例ばかり気にする…
ダメ企業の典型例
社員の能力開発プログラムを企業向けに実施していると、業績を伸展させている企業と、そうでない企業とで、対応に顕著な違いがあることがわかってきた。
結論から先に申し上げよう。「実施するかどうかを決定することに時間がかかる」、「細部まで検討や検証をしないと実施しない」、「話法や事例を取り込むにあたって、全ての部門からヒアリングしないと、プログラム内容が決まらない」、「他のどの企業で実施しているか、クライアントリストをまず確認する」、「価格を先に聞く」といった傾向は、業績が伸展していない企業が能力開発プログラムを検討する際によく見られるものだ。
こうした企業は、能力開発プログラムを実施するかどうかを検討している間の時間の損失に思いが至らない。まずは実施して修正しながらプログラムを合致させていくという発想を持てないのだ。
また、全員一致に固執し、異論を持たれることに過度に敏感である。さらに、自社の判断に自信がないから、他でやっているかどうかが決定要素となる。そして、プログラム内容よりもコストが気になるといった状況に陥っている。
一方、業績を伸展させている企業が、能力開発プログラムを導入する際の行動はどうだろうか。実は、非常に業績を伸ばしている企業ではしばしば、経営者自らが、そのプログラムに一参加者として参加する傾向がある。
こう申し上げると、「経営者の多忙な時間を、プログラムへの参加に費やすことこそ損失だ」、「能力開発部門に権限移譲できていない悪しき事例でしょう」、「それは、ベンチャー企業の話ではないか」、「そもそも、そんな企業があるのか?」という反論をお持ちの方もいるに違いない。
こうした反論を持ちの方に、ここ数ヵ月内の実例をご紹介したい。
ある東証一部上場企業のM社長は、2時間の能力開発プログラムの全てに、一参加者として率先して参加した。そして、その企業は主たるサービスの取り扱い件数を前期比40%伸展させている。
別の事例では、ある都道府県庁の部門の幹部の方々の能力開発プログラムに、中央省庁から出向しているキャリア課長が、一参加者として全プログラムに自ら希望して参加した。その部門は次々と革新的な取り組み行い、成果を挙げている。また、ある官民統合企業の能力開発プログラムでは、能力開発部門のヘッドが、率先して演習事例を提供したり、良い例、悪い例のモデルを披露したりしている。同企業は、飛躍的に業績を伸ばしている。
上場企業でも、役所でも、業績伸展させたり、改革を進めさせたりすることができている組織は、その組織のトップが率先して、能力開発プログラムに参加しているのである。