中絶してもデータに残らない!?

広瀬 そうです。私は、原発事故が起こった当時、茨城の人たちが送ってくる放射能の線量データをずっと見ていました。時々刻々と線量の高い地域が南に広がって、東京に向かってきました。怖かったです。

マコ さて、医学的にどうすればいいかと考えていたとき、チェルノブイリのベルラド放射能安全研究所のヤブロコフ博士から、

できるだけ公的な調査結果を集めなさい。公的なものでしか勝負できないから

 と言われ、私も集め始めました。

「わかりました。でも、念のため言っておきますけど、私、芸人ですからね」

 と答えましたけど……(笑)。

広瀬 医学者としてのマコさんが集めた公的なデータは、どのようなものですか?

マコ 医学者として集めているわけではなく、お医者さまに協力していただいています。1つは心電図です。学校保健法で、小1と中1と高1の心電図検査をすることが決まっているので、自治体に情報を開示請求して、それを集めています。
 心電図で異常がわかるのは稀ですが、生活クラブ生協取手支部などの調査では、原発事故の前と後で異常が増えているのではないかという結果もあります。
 学校の保健室と、養護室の記録も重要です。

 先生によって書き方は違いますが、注意深い先生の記録は「鼻血○人、腹痛○人、頭痛○人」に加えて、「腹痛の部位や、頭痛の症状」も書かれています。同じ先生が数年にわたってこのようなデータを取っていれば、比較できると思います。

広瀬 そうでしたか。私が個人的に聞いている話では、人口流産を推奨するケースが福島県内で多いようですが、堕胎について、何か資料はありますか?

マコ 私も取材するうち、医師から堕胎を勧められた人に何人も会いました。
「被曝しているから、堕ろしたほうがいい」と。旦那さんにも、家族にも言っていない、というケースもあります。

広瀬 すると、そういう数字は、データとして出てこないですね。

マコ 出てきません。福島県の妊産婦調査では、母子健康手帳を発行する前の中絶はカウントされません。だから、福島県の妊産婦調査での、中絶、流産は、明らかに実際より数字が少ないのです。
 私が取材して知った中絶数より妊産婦調査の数字が明らかに少ないため、県民健康調査検討委員会を取材すると、母子健康手帳発行後の中絶・流産のみの数字ということでした。