「介護予防」は日本語として間違っている

「介護を受けなければならない状態を迎えないように『予防』に努めましょう。そのために、無理に体を動かすのでなく、ヘルパーの手助けを受けながら、一緒に掃除や洗濯、調理などできる範囲内で行いましょう」。そこで生活支援サービスの提供となる。

「介護を受ける状態にならないように予防する」という内容を縮めて4文字に略したのだろう。しかし、出来上がった熟語は、「介護を予防する」とはなんじゃいな、である。「介護」は「予防」すべきものではないだろう。

 実は、「要介護」状態を防ぐのだから、「要介護予防」と言わねばならない。

 例えば、「火災予防」とは言うけれど、「消火予防」とは言わない。火災という事故に対応、処理するのが消火である。その消化作業を予防するとは言わない。同様に、要介護や障害状態に対応、向き合うのが介護であり、それを予防できるはずがない。介護予防という表現は、どう見ても日本語としては間違いである。

 間違った用語には、「いかがわしさ」が伴うのは歴史が証明している。先の大戦のスローガンを思い起こせば明らかだろう。

 では、「介護予防」のいかがわしさとは何か。「予防すれば、介護受ける状態にならない」という間違った発想が根底にある。認知症になるのは、予防の努力が足らないから、と言わんばかりである。

 生物はすべて死ぬ。次世代を育て上げれた後に年を重ねるのは、死への道程を毎日歩んでいること。完璧な予防に取り組めば、死を免れるとでもいうのだろうか。アンチエイジングは幻想に過ぎない。

 2000年4月に制度が始まった介護保険。将来の膨大な利用者増が想定されることに不安を抱いた厚労省内では、その発足時から「予防」が検討されてきた。要介護認定で最も軽度の判定を受けた「要支援1、2」の高齢者向けサービスの見直しが俎上に上っていたのである。

 介護保険のスタート前は、むしろ「保険料を支払ったのに介護サービスを使えない」という不満が出て来ることを回避するために、利用者を増やそうとした。軽度者の範囲を広げて、できるだけ多くの高齢者が介護サーボイスを使えるようにという作戦をたてた。そのため、介護保険制度で先行していたドイツと違って、要支援者まで認定対象者に含めた。ドイツでは、日本の要介護認定のほぼ3以上の中重度者が保険対象者だった。

 この作戦は奏功した。65歳以上の高齢者のうち15%前後が介護サービスを受けられることになる。家族介護からの解放感を多くの国民が享受することになり、アンケート調査では制度への支持率は90%を大きく超えた。

 軽度者への介護サービスの抑制は2006年4月から始まり、「介護予防」が喧伝されることになる。そして、今年度から着手された「新しい総合事業」で本格化し、各地の市町村で「介護予防教室」や「介護予防リハビリ」など介護予防が花盛りとなりつつある。