ソフトバンクグループが2013年8月に1.8兆円を投じて買収した米通信大手スプリントが、「負のスパイラル」から抜け出すために、瀬戸際の努力を続けている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義)
今秋、ソフトバンクグループの孫正義社長が米カンザス州カンザスシティに自宅を購入したというニュースを米メディアが報道した。カンザスといえば、スプリントのお膝元だ。
すでに米国ではカリフォルニア州のシリコンバレーに大邸宅を所有している孫社長が、わざわざここに第2の自宅を構える理由は、苦戦するスプリント再建へのコミットを内外にアピールする狙いもあるのかもしれない。
というのも、2014年夏にTモバイルUSとの2社統合を諦めて単独再建を決断したスプリントは、数字だけを見ればグループ全体にとって看過ならぬ「金食い虫」の事業のままだ。14年度のフリーキャッシュフローは▲33億1800万ドル(約3981億円)、15年度上半期も▲23億4600万ドル(約2815億円)を計上し、大量の資金を流出させている(下図参照)。
さらに今年4~6月期の契約者数では10年間維持してきた業界3位の座を、過激なキャンペーンでシェアを伸ばすライバルのTモバイルUSに明け渡すことになった。負債総額はすでに339億6500万ドル(約4兆円)に達しており、利息だけで年間約20億ドル(約2400億円)のキャッシュが消えてしまう計算だ。
この収益体質では、通信事業の生命線ともいえるインフラ投資のためのキャッシュが本業で全く賄い切れず、利息の高い借金が将来の収益を押しつぶしてしまう。そこで孫社長が直々に通信ネットワークの設計に参加し、経営会議に頻繁に顔を出しているのだ。
反転攻勢に向けた現地の態勢づくりは、昨年8月に新しくCEOに就任したマルセロ・クラウレ氏が現地で取り仕切っている。その要は「固定費の削減」「資金調達の多様化」「ネットワークの改善」の三つに集約される。