ニューヨーク連銀は、約80億ドルの年末越えの資金供給オペ(43日物)を実施すると11月26日に予告発表した。通常の連銀の資金供給期間は1~14日物なので、長めのオペということになる。ドルの年末越えの金利が上昇していることに対応したものだ。

 銀行間の資金貸借市場でお互いの信用力に疑念が生じると、期間が長いターム物取引は成立しにくくなり、金利は高騰する。1997~1998年に勃発した日本の金融システム危機時のコール市場がまさにそれだった。資金繰りに苦しむ金融機関を助けようと、日本銀行は資金供給の期間を長期化させた。その名残もあって、現在でも日銀の資金供給期間は長い。100日間を超すオペがたびたび行なわれている。連銀が今回アナウンスしたオペは、長いといっても43日物だ。日本の短期金融市場参加者にとってみれば、「連銀もようやくオペの期間を長くするようになったか」という感じだろう。

 最近の米国のフェデラルファンド市場では、オーバーナイト取引(期間1日)にも不安定な動きが現れている。午前中は欧州系銀行がドル資金を確保しようとするため、金利に上昇圧力が加わる。また、モーゲージ担保証券のレポ市場が荒れて、それがオーバーナイト金利に波及することもある。

 多くの金融機関は安全策として日中は厚めの流動性を抱え込みたがっている。それによる金利上昇を抑え込もうと連銀は多めの資金供給を行なっている。夕方5時過ぎになると、銀行は余剰資金を市場で放出し始めるため、オーバーナイト金利は一転して大崩れする。11月21日の場合、午前中はFRBの誘導目標(4.5%)を上回って5%まで上昇していたが、夕方は1%へ急低下した。ジェットコースターのようだ。

 これを安定させるための方策として、ライトソンICAPのFedウオッチャー、ルー・クランドル氏は、「期待のチャネルを働かせるべきだ」と指摘している。連銀は日々の準備預金残高やその見通し等を公表するほうがよいという。そうしないと、連銀がオペで多めの資金供給を行なっても、夕方になるまで金融機関は市場でおカネが余っていることを認識できない。つまり、連銀のメッセージが市場に伝わりにくい状態になっている。もっとも日銀はそのような情報開示を以前から行なっている。幸か不幸か、市場の混乱に関しては日本に「1日の長」がある。

 邦銀の資金繰りに問題は生じていないが、円の年末越え金利もドルやユーロにつられて上昇気味だ。しばらくは、欧米短期金融市場の動向に警戒が必要である。
(東短リサーチ取締役 加藤 出)