厚生年金の加入者(保険料納付者)と受給者の推移は、【図表1】と【図表2】に示すとおりである。

 2010年を1とする指数で見ると、2040年において、受給者は1.22に増加する反面で、保険料納付者は0.8に減少する。日本における年金の問題とは、結局、今後30年の間に、保険料納付者が8割に減り、他方で受給者が2割以上増えるということに集約されているのである。

 これですら楽観的な見通しである可能性もある。まず、製造業の海外移転が進んだり、厚生年金に加入しない非正規労働者の比率が増えたりすれば、加入者数はさらに減少するだろう。他方で、年金額のデフレスライドやマクロ経済スライドが完全に実施されなければ、年金の所得代替率が上昇するため、年金受給年齢に達した後は就業を続けて在職老齢年金の制約で年金をカットされるよりは、就業せずに年金をフルに受給することが有利になるだろう。これは、受給者数をさらに増やす可能性がある。

マクロ経済スライドや保険料率引き上げでは
対処できないはずなのだが

 こうした事態に対して、日本の年金制度は適切に対処しているとは考えられない。

 まず、加入者の減少と受給者の増加に対処するため、「マクロ経済スライド」の制度が導入された。ただし、毎年0.9%程度の年金額削減を2023年度まで続けることとされているだけなので、将来の年金額を11%程度削減する効果しかない。受給者は2040年度には現在の1.22倍になるので、他の条件が変わらなければ、給付総額は現在より8.5%増加するはずである。

 他方で、保険料率は現在の16%から18.3%へ引き上げられるとされている。しかし、保険料納付者が8割に減少するため、賃金上昇がなければ、保険料収入は2040年度には現在の91.5%に減少するはずである。

 だから、厚生年金制度の収支は悪化し、現在144兆円ある積立金は、どこかの時点で枯渇するはずなのである。