「撤退するアメリカ」が
  アジアを紛争地にする

世界経済の中心がアジアにシフトするにつれて、インド洋と太平洋が21世紀の国際水路の要になる。そこで中国の外洋海軍が強化されれば、アメリカの海の覇権は薄れるだろう。だとすれば、公海に目を光らせ、航行の自由を守る海洋同盟を構築する大国はどこになるのか。

これから数十年間のアジアの秩序については、私は四つのシナリオがありうると思う。

(1) 現在と同じで、ルールに基づく協力と、アメリカと中国の静かな競争(ほとんどのアジア諸国はどちらにもつかず中間にいる)が続く。

……アメリカの優位を基礎とする同盟が安全保障秩序を維持し、中国の軍備増強、北朝鮮の核開発といった潜在的な問題の影響は薄れる。地域機構が成長し、経済統合はアジアだけでなく環太平洋ベースで進む。小規模な軍事的事故がエスカレートして、大衆の熱狂的な愛国主義に火がつけば、紛争に発展するおそれがある。

(2) 激しい勢力争いを伴う勢力均衡秩序が形成される。ダイナミックなパワーシフトと、アメリカの役割縮小が勢力争いを激化させる。

……アメリカが孤立主義を取るか、経済的に衰退して、東アジア諸国は、もはやアメリカは東アジアの安全保障維持に関心がないと考えるようになる。こうした地域秩序は「いがみ合いには絶好の環境だ」。アメリカの不在を補うために、核開発または核獲得に乗り出す国も出てくる。これは最悪のシナリオであり、東アジアは現在の中東よりも大規模な地域紛争に向かうだろう。東アジア諸国は中東諸国よりも経済的・技術的に豊かだから戦争はより壮絶なものになる