農業改革を行う
千載一遇のチャンスを失う

 しかし、農産物について関税撤廃の例外を多く要求したために、アメリカが自動車にかけている2.5%の関税は、協定発効から15年後に削減が開始され、25年後になってやっと撤廃されることになった。2.5%というと小さいように見えるが、輸出車は価格の高い高級車が多いため影響は無視できない。韓国車との競争条件の不利性は、25年も固定されることとなってしまった。

 また、消費者に高い農産物価格を負担させ続ける。例えば、国内の小麦生産は消費量の14%に過ぎない。その価格はキログラム当たり50円である。その国産小麦価格を維持するために、消費量の86%に上る輸入小麦に対し、その30円の輸入価格に農林水産省が20円の課徴金を加えて50円にしている。今回議論している消費税の軽減税率とは、50円の小麦にかかる5円(50×10%)の消費税を1円(50×2%)まけてあげるというものだ。TPPでこの課徴金が9年かけて45%削減されることになったが、それでも10円以上の課徴金がかかり、消費者が高いうどんやパンを食べさせられることに変わりはない。

 米、乳製品、砂糖の課徴金などは、削減もされない。消費税の軽減税率で消費者の負担が少なくなるのは1兆円である。それなのに、農業保護の名のもとに、消費者に4兆円もの負担をさせている逆進性そのものの農産物の貿易制度の維持は、国益と言えるのか。米の減反政策では4000億円の財政負担をしたうえで、これによって米価を上げ消費者に6000億円の負担をさせている。

 農政は農業改革を行う千載一遇のチャンスを失った。国民経済の厚生を最大にするのは、関税なしの自由貿易制度を採って消費者の負担を軽減し、農業は直接支払い(市場価格に介入せずに、生産者に対して直接支払われる補助金)で保護するという政策である。減反廃止で米価が下がれば、零細な兼業農家は農地を維持できなくなる。主業農家に限って直接支払いをすれば、その地代負担能力が上がって、農地は主業農家に集積し、コストが下がって、価格競争力は一段と強化される。

 関税はカルテルの母だという経済学の言葉がある。関税がなければ、国際価格よりも高い国内価格は維持できない。実は2014年度、国内の米価はカリフォルニア米の価格を下回った。このため主食用の無税の輸入枠10万トンは1万2000トンしか輸入されなかった(図参照)。日本の商社は日本米をカリフォルニアに輸出しようとしていたほどだ。減反というカルテルを廃止して価格をさらに下げれば、米を大量に輸出することが可能になるはずだった。

来年の参院選を意識
ウルグアイ・ラウンド対策の再現

 1986年~ 1994年に行われたウルグアイ・ラウンド交渉で、米のミニマム・アクセス(最低輸入義務)を受け入れるに当たり、時の細川内閣は、国内の需給に影響を与えないという閣議了解を行った。輸入した米と同量の米をエサ米や援助用に処分するので、国内の生産を減少させる必要はないというものだった。農業には影響はないので、国内対策は必要なかった。