達成すれば得られる見返りが魅力的で、しかもそれが、努力次第で得られる可能性が高い時に、人は努力できるものなのだ。これを動機付け理論の中では期待理論という。

 だから、キャリアを成長させるためにはまず、自分はキャリアを成長させることができると信じなければいけない。ところが、最初は思い込みでもいいだろうが、自分一人の思い込みで可能性を信じ続けることは難しい。

 周りの皆から「無理だ」と言われ続けたら、しばらくは頑張れても、長くはもたない。いつかは陥落する。「わかった。私には無理だ」と自分も思うようになってしまう。

 逆はどうだろうか? 皆から「お前ならば大丈夫だ」と言われれば、何となく「できるかもしれない」と思えてくるだろう。努力すれば何とかなると思った瞬間に、人は努力できる、努力し続けることができるようになるものだ。

 つまり、自分の可能性を信じるためには、周囲が期待してくれることが大切なのだ。ただし、ここで発想を転換することが求められる。ただひたすら周囲から期待されるのを待つのはいかにも情けない。他人に人生を委ねるようなことを、私は勧めない。

 確実に人から期待される状態を自ら率先して作るべきなのだ。つまり、周囲の期待を集め続けられるように、組織の中で適切な立ち位置を取り続けなければいけない。これが私のキャリア成長論のベースだ。期待されるようにしたたかに振る舞うことが求められる。

言われたことをクリアして
「優秀」と言われる20代を過ごす

 キャリア成長論はとてもダイナミックに変化する、20代の頃に周囲から期待される立ち居振る舞いと、30代のそれは違うし、40代、50代と当然すべて違うということだ。年代に合わせて立ち位置を変えていくことが求められる。

 この、年代に応じて立ち位置を変化させるというのが実はとても難しい。20代のころに周りから期待されてちやほやされると、そのままの行動様式で30代も振る舞い続けてしまって、今度は周囲の期待を裏切り、過去の人になってしまうということが非常に多い。これは30代から40代、40代から50代でも同じだ。

 だから、10年ごとに自分のキャリアを振り返り、その後の10年のキャリアテーマを決めていく必要がある。

 もう一つ、若いうちのキャリアテーマは皆、似たり寄ったりであっても、経験を重ねるにしたがって、バリエーション、つまりは個人差が豊かになっていくものだ。だから、40代ともなれば、それこそ自分なりの、個性的なキャリアテーマを設定できないと、周囲の期待はもはや集められなくなる。その点は注意してほしい。