サウジとイランは石油大国でもあるため、対立の激化は、一昨年の秋以降に急落したまま低迷を続ける原油価格にも影響を及ぼす。厄介なのは、両国の対立度合いによって、さらなる下落要因にも、急騰要因にもなるという点だ。

 当初は、地政学リスクの高まりによる原油供給の途絶懸念から、価格の押し上げ材料とみられた。ところが、足元では、投資家がリスク回避の動きを強め、原油や株式などのリスク資産を嫌気した結果、原油市場は弱含んでいる。

「沈静化に向けて米露が仲介に入ろうとしているし、原油の在庫は最高水準近くに積み上がっており、両国の対立激化だけでは、需給の緩みは覆せない」と原油市場に精通するJOGMECの野神隆之上席エコノミストは指摘する。7日午前にはドバイ原油が11年9カ月ぶりに1バレル30ドルを割った。

 一方で原油の急騰リスクは依然としてくすぶっている。

 両国が武力紛争に突入した場合だ。そうなれば、世界に供給される原油の2割近くが通過するホルムズ海峡の封鎖や双方の石油施設の破壊といった地政学リスクが現実味を帯び、急騰は必至だ。

 軍事衝突に発展する可能性は低いとされるが、中東情勢に詳しいインスペックスの畑中美樹特別顧問によれば、「イランはスンニ派聖職者を逮捕しており、復讐として処刑するかもしれない」「イランは大使などサウジ要人の殺害で応えるだろう」との現地報道もあり、開戦の火種は少なくない。

 さらに、マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役は「サウジは、昨年のアブドラ国王死去後に就任したサルマン国王のスデイリ(同腹の親族)重用主義などで、王室内部の対立が激化していることも大きな懸念。また、王族はクーデターにも相当な危機感を持っている」と指摘。緊縮財政で国民の不満が爆発し、王政転覆につながるリスクも忘れてはいけない。

 年初の地政学リスクはこれで終わりではない。

 6日には、核保有を悲願とする金正恩(キム・ジョンウン)第一書記の北朝鮮が国際社会からの孤立覚悟で、核実験の成功を発表し、金融市場は再度、冷え込んだ。

 中東に視線を戻すと、サウジ・イランの北西では、オスマン帝国の復活を期すようなトルコのエルドアン大統領が強権体制を固めており、イスラム世界の覇権争いに参戦しそうだ。イランと親密でシリアのアサド政権を支援するロシアの暴君、プーチン大統領も緊迫化する中東情勢の鍵を握る存在として、引き続き目が離せない。

 金融市場は、米大統領選挙に加えて、世界の地政学的な要衝を統べる権力者たちの策謀に翻弄される1年となる。