ギリシャをはじめとする数ヵ国がユーロを離脱した場合の影響は、大方の人が想像する以上に大きい可能性が高い。ドイツのベテルスマン財団は、2012年10月17日付レポートにて、仮にギリシャだけの離脱に留まったとしても、大幅な通貨下落、大量の失業、国内需要の劇的な減少等の問題が発生し、これらは貿易相手国にも多大な影響を与えるとしている。そして、ギリシャだけで1640億ユーロ(約21兆円)、世界には6740億ユーロ(約88兆円)もの損失をもたらすとしている。

 これにポルトガルが加わると、世界経済への損失は2.4兆ユーロ(約312兆円)に拡大し、うち、域外国である米国に3650億ユーロ(約47兆円)、中国に対してさえも2750億ユーロ(約36兆円)もの損害を与えるという。さらに悪いケースとして、スペインまでも離脱するとなると、世界で7.9兆ユーロ(約1027兆円)もの損害が発生し、うち米国は1.2兆ユーロ(約156兆円)もの被害を被るとしている。

 これらのシミュレーションは、ギリシャのユーロ離脱を契機として、次なる世界恐慌が発生する可能性を示唆している。ギリシャの離脱を軽々に論じることはできない。

ドイツは痛みを共有できるのか
残された時間は限られている

 ではどうすればいいのか。

 もともと、ユーロ問題解決の抜本策は、(1)ドイツなどユーロの恩恵を受けてきた国々が南欧諸国のさらなる支援に踏み込めるか、(2)社会保障制度の統一や労働力の移動のさらなる自由化など市場統合効果を進め、競争力格差を埋められるか、(3)各国の財政政策に、より強力なタガをはめることができるか、といったことであると言われてきた。もしユーロが救われるとすれば、巷間言われているような「ユーロ共同債」構想をはじめ、ドイツが南欧諸国のために痛みを引き受けることが必須だという声は、第2次ギリシャ支援の当時から根強く聞かれる。

 ドイツは、間違いなくEUの最大の受益者だ。そして、EUの中で図抜けた存在になった。一応民主的なプロセスは事後的に踏むとしても、EUないしユーロの存続可能性はドイツの意向次第で決まると言っても過言ではない。

 第二次世界大戦までのドイツは、軍事によって欧州を征服しようと試み、失敗したが、今はEUという枠組みの中で経済的にそれを成し遂げようとしている。そうした歴史を振り返る時、メルケル首相が強い指導力を維持できている間に、ドイツがEUとユーロを守るという決意を表明することが世界経済のために死活的に重要であると筆者は思う。そしてそれができる時間はもう限られているように思われる。