とはいえ、サウジアラビアとイランが軍事衝突に至るとは考えにくい。バーレーンやスーダンに加え、どの程度のアラブ諸国がサウジアラビアに追随していくかは注意して見る必要があり、とりわけエジプトなどの動向は大きな影響を与えよう。

 ただ、核開発に関わるイランへの制裁は正式に解除されるに至り、イランの影響力はますます高まって行くことになる。このようなサウジ・イラン関係のバランスの変化が一層の緊張を生むことになるのかもしれない。中東での大規模な衝突は石油ガスの輸出に重大な支障をきたし、日本も深刻な影響を受けることは免れない。

リスク7:EU分解リスク
英国の国民投票が決定的影響

 現在のEUの危機は、「深化と拡大」の歪みから発している。「深化」では、ユーロの導入が財政政策の統合なく行われたことでギリシャなどでの放漫財政を許し、歪みが生じた。「拡大」では、EU加盟国がロシアの国境近くに及び、ウクライナを最後の砦と考えたロシアが同国のEUやNATOへの加入阻止に動いたことが、ウクライナ問題の背景となった。シリアからの難民の大量流入も、EU内での人の移動の自由化が大きな背景となっている。

 そのようなEUの危機を背景として、EU諸国では国内政治が揺れ動いている。ハンガリーやポーランド等では排外主義的色彩を持つような保守政党が政権についているほか、仏では極右勢力と称される国民戦線が地方選挙でも支持を大きく増やしている。一方スペインなどでは緊縮財政を嫌う極左政党が勢力を拡大している。2017年にはドイツの総選挙やフランスの大統領選挙が予定され、どのような政権が両国にできるのか注目される。

 EUの将来に決定的影響を持つのは、2016年中にも実施される可能性のある、英国におけるEU離脱の是非を問う国民投票である。キャメロン首相は国民投票を前にEU改革案についての交渉を行っている。しかし、同首相が特に重要とするEU域内移民への社会福祉の制限といったことは認められる可能性は低く、交渉の不調は離脱への賛成票を増やす結果となるのだろう。もし英国が脱退するとなれば、スコットランドは連合王国から独立しEU加盟を求めていく蓋然性は高い。

 EUの分解といったことに至らなくとも、これまでEU経済を実質的に支えてきた深化と拡大がこれ以上進んでいくこともあまり想定できない。EU経済に対する打撃は大きく、その経済停滞は日本を含め世界経済に悪影響を与えるのだろう。