最も簡単なのは、定量評価の結果であるレーティングに基づいて投資信託を選ぶ方法です。これは暗に「上手い運用者であれば、過去しっかりと実績を上げているだろうし、そういう運用者は将来も良い実績を獲得し続けるはず」と考えていることを意味しています。この考えに同意できる人であれば、定量評価だけで決めてもいいでしょう。でも評価する際、十分に長い期間の実績を見る必要がある点には注意してください。過去の実績が短いと、実績が良かったとしても、たまたまその期間その運用者の投資手法が上手くいっただけであり、将来に今までと違う経済環境になった場合、過去のように優れた実績をあげられるのかわからないからです。特に、割安株投資や成長株投資、小型株投資のような特定スタイルをうたっている場合には、この点には注意が必要です。

 やっかいなことに、日本の投資信託を定量評価する際には、更なる注意が必要なのです。なぜなら日本には、長期の実績を有する投資信託が少なく、長期の定量評価で他の投資信託と比べようにも十分な比較ができないからです。これには新し物好きな日本人の特性が影響していると思います。実際、少し前までは次々と新しい投資信託が設定される一方、多くの投資信託が償還されており、「ロングセラー」的な位置づけの商品がほとんど無いという状況となっていました。確かに家電製品などでは新しいテクノロジーが採用される新製品の方が良いと思いますが、運用においては「新しい=様々な局面を乗り越えた実績がない」ことを意味するので、実績のない新しい投資信託では、その良し悪しを判断することが非常に難しくなります。

 このように、定量評価やそれに基づくレーティングには限界があるため、それを信頼し過ぎるのは避けた方が良いのです。

定性評価:労多くして功少なし

 定量評価の限界を補うためには、定性評価が不可欠になります。機関投資家のようなプロの世界では、定性評価では、投資哲学(基本コンセプト)、投資プロセス、人材等を評価するのが一般的です。それぞれの項目で高いクオリティにあることはもちろん、それぞれが整合的であることも重要で、機関投資家はそれを確認するために、運用者と面談したり質問状を送ったりしています。このような一連のやり取りを通じて、機関投資家は運用者の能力を把握できますが、残念ながら個人でこれらを実施するのは現実的ではありません。では、どうすればいいのでしょうか? 一つには、目論見書や運用報告書、月次報告書などの公開情報から投資哲学や投資プロセスなどの情報を集めて、横比較することが考えられます。でも公開情報だけでは、比較に必要な情報を収集するのは難しく、また提供される情報の質量も会社によって差があるため、個人的には「労多くして功少なし」なように思います。定性評価が大事とはよく言われますが、実は個人でそれを実施するのは難しいのです。