政府は6月18日、新成長戦略を閣議決定し、7つの戦略分野と、21の国家プロジェクトを示しました。戦略分野については、「○○大国」などの誇張を除き、シンプルに整理すると以下のようになります。
1)イノベーションによる環境・エネルギー戦略
2)イノベーションによる、健康戦略
3)アジア経済戦略
4)観光・地域活性化戦略
5)科学・技術・情報通信戦略
6)雇用・人材戦略
7)金融戦略
1)の環境・エネルギー分野については、2)の健康と同様で、生活習慣などを変えつつも、やはり最後は「イノベーション頼み」といったところかもしれません。
3)のアジア経済戦略においては、戦略のひとつに「パッケージ型インフラ海外展開」というものがあります。その中で、最近特に注目されているのが、「水ビジネス」です。
拡大する市場。
水ビジネスで海外を目指す日本
水処理に対するニーズは今後ますます高まるものと予想されており、経済産業省の試算によると、2007年現在の水ビジネスの市場規模は約36兆円。それが、2025年には約87兆円に増加。約2.4倍に拡大することが見込まれています。
これまでも、淡水化など日本企業が有する水処理技術は、世界のトップクラスと言われていました。しかし海外展開では、ヴェオリアやスエズというフランスの民間企業(水メジャー)に遅れを取っていました。
その原因は、日本の企業は技術的には優れているものの、水道事業の運営ノウハウを持ち合わせていないことにありました。皆さんもご存知のとおり、日本で水道事業を運営しているのは地方公共団体です。
そこで今回のアジア経済戦略の中にあげられた「水ビジネス」では、企業と地方公共団体との連携により、「技術×運営ノウハウ」をパッケージ化し、そのインフラで海外展開を目指そうというものです。
確かに、水ビジネスに限らず、環境ビジネスにおいては、日本の優れた技術、ノウハウを海外に展開していく方向性が王道だと思います。事実、閣議決定された成長戦略でも、「国内から海外へと」という戦略が目につきました。
しかし日本人の多くは、環境問題に関して頭では理解しているものの、何かモヤモヤする、つまり「腹に落ちない」状況に陥っています。そんな中で、環境を国家戦略の重点施策に掲げ、「環境分野で海外に進出」といわれても、多くの人はピンと来ないかもしれません。
これまで、環境政策の多くは国内完結型のものでした。そこからいきなり海外展開を目指すと言っても、そのまま順調に進むとは思えません。国内展開という「内向き志向(内から内)」から、海外展開という「外向き志向(内から外)」に、単に切り替えるだけではダメなのです。
海外に出て行くのであればなおさら、日本の現状を改めて知る必要があります。海外に出てこそ、日本を再認識するという「価値観の相対化(外から内)」という視点を持つことが重要なのです。