乗員乗客合わせて15人が死亡した軽井沢スキーバス事故。1985年に同じ長野県で発生した事故以来の大参事となってしまった。大型バス事故の背景には人員不足や価格競争があると以前から指摘されてきた。それでも今回の事故が起こってしまったのはなぜか。外国人観光客が増え、東京五輪に向けて国内観光がより活性化すると思われる中で、業界は厳しい課題を突き付けられた。旅行会社の関係者に聞くと、想像以上に危険なバス業者の現状が見えてきた。(取材・文/蒲田和歌 取材協力/プレスラボ)

なぜ悲劇は繰り返されるのか?
スキーバス事故の背景に見える病み

大惨事となった軽井沢スキーバス事故の背景に何が?旅行会社の社員たちが明かす、バス業者の深刻な実態(写真は本分とは関係ありません)

 悲惨な事故がまた起こってしまった。

 1月15日深夜に発生した、軽井沢スキーバス転落事故。スキー客を乗せた大型バスが道路脇に転落し、乗員2人、乗客31人中、乗員2人と乗客13人が死亡した。多くが即死だと見られることが、事故の激しさを物語っている。

 そんな中、犠牲者の1人、早稲田大学の学生だった阿部真理絵さんの父・知和さんが報道各社の取材に対応したコメントが話題になった。一部を抜粋する。

「今回の事故については、憤りを禁じ得ませんが、多くの報道を見ていると、今の日本が抱える、偏った労働力の不足や、過度な利益の追求、安全の軽視など、社会問題によって生じた、ひずみによって発生したように思えてなりません。今回の事故については、警察によって原因と責任の追及がなされ、また、行政による旅行業者の問題の洗い出しや、改善が行われることを期待しておりますが、すぐによくなるものではないと思っております」

「きょうも多くの若者がバスツアーに出かけているでしょう。ぜひ、自分の身は自分で守るということを考えてください。優先順位を間違えないこと、安全は『マスト項目』であり、費用削減は『ウォント項目』であることを冷静に考えてほしいと思います」

 娘を失うという大きな悲しみの中でのこの問題提起に、心を揺さぶられた人も多いだろう。犠牲者の大半が学生だった理由は、格安バスツアーだったからだと指摘されている。直接の事故原因はまだ判明していないが、企業が価格競争の末に安全より価格を優先し、その犠牲となったのがまだ社会に出る前の学生たちだったとしたら、やり切れない事実だ。 

 このような悲劇を繰り返さないために、私たちが考えるべきことは何なのだろうか。