昨年の衆議院総選挙では最重要論点の1つだった「地域主権」「地方分権」をめぐる問題意識が後退している。参議院選挙を前に、6月22日に閣議決定された『地域主権大綱』の内容も、“骨抜き”と指摘されている状況だ。なぜ、この1年で「地域主権」に関する議論がおぼつかなくなってしまったのか。鳥取県知事時代に「改革派」として絶大な支持率を誇った慶応義塾大学・片山善博教授に、その理由と本来あるべき地域主権改革の姿を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
地域主権改革は全く進展なし
“総務省流の骨抜き改革”へ
――昨年の衆院選では注目を浴びていた「地域主権」の問題が、影を潜めている。その理由はなぜか。
photo by Toshiaki Usami
昨年、自民党が地方改革の一環として「道州制」を全面に押し出していたのに対し、民主党は「住民投票法」の制定や「住民によるガバナンス形成」「議会改革」をはじめとした地域主権改革を打ち出していた。これは、非常に的を射たアジェンダ設定だった。
もしこれらをしっかりと進めていれば、民主党はこの分野で国民の支持を得られていたはずだ。しかし、実際には何も進めていない。行なったのは、1年前から何ら進展していない『地域主権大綱』をまとめただけである。これでは、住民や国民が関心を持つはずがない。
現在の民主党は、自民党時代の地方分権路線と全く同じ道を歩んでいるといってもいい。結局、総務省流の従来路線になっている。過去、自民党型の地方分権改革が国民の関心を得られなかったのと同様に、民主党の地域主権改革も関心を呼んでいないのだろう。
――現在の地域主権改革は、「総務省主導の色合いが強い」ということか。
明らかに総務省流だ。改革のプログラムのなかに「総務省」自身や「住民」が登場しないことからも、明らかだろう。
確かに「義務付け・枠付けの廃止」や「市町村への権限移譲」、「一括交付金化」を目指すという方針は基本的に正しい。ところが、これらは全て総務省に関係のない項目で、総務省の利害に絡んだ改革案が登場しない。
総務省が持っているいびつな権限、つまり交付税の私物化やひも付き化などについては、一切口を拭っている。つまり、対象となるのは他省に関係する案件ばかり。これでは、「総務省以外の省庁の影響力を排除する作戦」と受け取られても、仕方がない。自治体をがんじがらめにする規制を自ら持っていながら、他省を規制するのはおかしい。まず、自らの改革をすべきだ。