2倍の未来へ──。2020年までの事業規模倍増を目指し、三菱商事が13年から掲げる戦略だ。資源の持ち分も2倍に増やす方針だが、市況低迷で雲行きが怪しくなり始めた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)

 資源安に連動して資源権益の資産価値が目減りする“減損スパイラル”が止まらない。

 総合商社では住友商事が1月、ニッケル開発の投資回収が見込めなくなったとして770億円の減損損失を計上すると発表。2016年3月期にはさらなる減損が発生する見込みで、住友商事は計1000億円以上の巨額減損に足を引っ張られることになる。

 他の総合商社も減損は必至の情勢で、15年3月期に続いて資源安の返り血を浴びるのは住友商事1社にとどまらない。

 そんな中、業界の雄、三菱商事も資源戦略の修正を余儀なくされている。その戦略とは、13~15年度の中期経営計画「経営戦略2015」に掲げた、液化天然ガス(LNG)、原料炭、銅の持ち分生産量倍増計画だ。いずれも同社が強みを持つ事業で、それぞれ20年ごろまでに12年時点の2倍に増やす目標を立てている。

 中でもLNGは、世界最大の輸入国である日本の輸入量の3分の1を手掛け、現在の持ち分生産能力は827万トン。これを1400万トンまで大幅に積み増し、欧米のメジャーに比肩する存在になろうとしているのだ。

 LNGは天然ガスをマイナス162度まで冷却し、液体にしたものだ。1960年代に英国のガス会社がアルジェリアから輸入したのが最初とされる。当時は海底でのパイプライン敷設が難しく、LNGにすることで英国のような島国へ天然ガスの船舶輸送が可能となった。