時間や空間を行き来できるタイムマシンは実現可能なのか──。
この問題は一見、宇宙とは関係なさそうだが、宇宙を舞台として人類が自由に活動できると仮定すれば、一部は実現する可能性があるのだ。あくまで思考実験の域であり、実現可能性は非常に低いが、現在の科学でわかる範囲で考えてみよう。
まず未来への移動について考えよう。ずばり、未来への移動は可能だ。むしろ「日常的に、あなたも未来に移動している」(佐藤勝彦・自然科学研究機構長)といえる。
高速に移動している乗り物の中は時間の進み方が相対的に遅くなることがわかっている。たとえば、新幹線で東京から博多まで乗った場合、止まっていた人に比べて10億分の1秒、未来に行くことができる。特殊相対性理論という物理法則として知られており、実際に確認されている。
これ以上速いものはないという光の速度、つまり「光速」に近づくほど時間の流れは遅くなる。光速の99%の速度(亜光速)で進む宇宙船に乗れば、時間の進み方は約7分の1になり、図のように10年間の宇宙旅行に行って帰ってくると、地球では70年がたっている計算だ。ただし亜光速宇宙船の開発は非常に困難が予想される。光速に近づくには莫大なエネルギーが必要であり、そんなエンジンを開発するのは人類には無理かもしれない。