「自分だけが好きなこと」を流行らせて、それを仕事にする
みうらじゅん著 文藝春秋
175p 1250円(税別)
好きなことを仕事にできたらどんなに幸せだろう。誰しも一度くらいはそんなことを考えたことがあるはずだ。しかし、いざまじめに考えてみると、それを実現するのはとても難しいことに気づく。
自分は絵を描くのが得意で大好きだ。だから将来は漫画家になりたい、という希望をもったとしよう。でも、そんな人は世の中にはゴマンといるはずだ。漫画家として食っていけるようになるまでには、厳しい競争を勝ち抜かなければならない。普通はそこで冷静になり、「自分にはそんな競争に勝ち抜くほどの実力はないな」と、夢を諦める。
しかし本書の著者みうらじゅんは、普通の人には思いもよらない方法で「好きなこと」を仕事にしてきた。それは、「自分だけが好きなこと」を、世の中で流行らせて、それを仕事にするという、逆転の発想によるものだ。本人に言わせれば「『ない仕事』を作る」。これならば、少なくとも最初は自分が第一人者になれる。競争に勝ち抜く必要もない。
みうらじゅんといえば、「マイブーム」という言葉の生みの親として有名だ。「マイブーム」は、1997年の「新語・流行語」トップテンに「たまごっち」や「もののけ(姫)」とともに選ばれている。そして本人の膨大な数の「マイブーム」の中からは、「ゆるキャラ」をはじめ世間一般の大ブームになるものも生まれている。
みうらじゅんは、漫画家、イラストレーター、エッセイスト、小説家、ミュージシャン、評論家、ラジオDJ“など”、本人もどれが本業かわからないほど幅広い肩書きで活動している。本書の中でも、今や最後の「など」の比率が大きすぎて、もはや肩書きは「など」だけではないか、と言っている。本人にそんな意識は毛頭ないのだろうが、多様な領域でそれまでに「なかった」新たな価値を生み出してきたということなのだろう。
本書では、これまでの35年間にわたる「みうらじゅんの仕事」を、いかに「ない仕事」を考案しそれを世の中に広めてきたかという視点で振り返り、解説(自慢?)している。