預金は要らないのか

 発表から開始までわずか2週間半。そんな強行日程でマイナス金利政策の衝撃に備えた銀行界は、異様な世界に突入している。

 前述の定期預金の金利だが、通常は預入期間が長いほど金利が高い。しかし、期間の長短に金利差をつけないという、今までの常識を覆す“値付け”がなされた。

「預金を短期に誘導する狙いだが、暗に預金は要らないと言っているようなもの」(第二地方銀行幹部)。預金を元手に融資をするという、銀行の根本にあるビジネスモデルを覆すような異例の事態だ。

 背景には、金を集めても運用して稼ぐ先が乏しい状況がある。

 日銀としては、日銀当座預金に積み上がった銀行の資金を企業融資に回し、経済の好循環を生み出したいという政策意図がある。しかし、銀行界からは「貸せる先にはもう貸している」「運用先がないのは融資先も同じで、むしろ厚めに持っていた余剰資金が銀行に返ってくるのではないか」(メガバンク関係者)といった弱音が漏れる。

 居場所をなくしつつあるのは、銀行預金や日銀当座預金の資金だけではない。短期国債などで運用するマネー・マネジメント・ファンド(MMF)は、マイナス金利政策の余波で販売停止に追い込まれた。国債の利回りが低下し、安定運用ができなくなったからだ。

 銀行としては、そうした「行き場を失った資金が銀行口座に流れ込んでこないような防衛策が必要」(大手地銀幹部)という状況だ。

 マイナス金利政策は早くも、「マネーの行き場がない」(同)という異常事態に直面している。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)