今年の中国国会(全人代と政治協商会議)は、かなり真面目な報道が多かった。例年なら、現代の“お姫様”(国の元指導者の令嬢)が超有名な海外ブランドを身に纏い、人民大会堂をファッションショーのようにメディアに登場するシーンは、今回はすっかり消えた。腐敗一層運動によって、少なくともそれが許されなくなっている。
ただし、富の集中は、今の中国ではまったくテンポを緩めたわけではない。国会開会期間の2週間ほど前、2月24日に毎年発表を続けている「胡潤富豪ランキング」というものがあるが、今年は世界の富豪と比較した「胡潤世界富豪ランキング」として発表された。
それによれば、グレーターチャイナ地域でランク入りした富豪が568人と初めて米国の535人を上まわり、資産10億ドルを保有する億万長者が世界で最も多い「富豪国家」となった。なかでも北京は億万長者100人を抱える「富豪の都」の誉れに浴し、その人数は昨年より32人も増えている。
中国で毎年注目を集める
「富豪ランキング」
このランキングは、日本ではまったく無名に近いが、中国では轟々たる名声を挙げている。
1970年生まれのイギリスの会計士・胡潤(Rupert Hoogewerf)は、中国語勉強のために中国に来たが、ここで一大ビジネスチャンスを発見した。経済成長のなかで、多くの中国人にとって、隣の人がどのぐらい豊かになっているのか興味津々だったのだ。
胡潤は、会計士の資格を持ち、財務データを見る能力があった。中国人富豪ランキングを作ったら注目されて有名になると思い、1999年に新聞を100紙以上集め、その調査結果を公表した。初めての「胡潤富豪ランキング」だった。
だが真の富豪の資産がその年にかならずしも報道されるわけではなかったので、ランキングに載らない富豪が不満に思い、抗議に来ることが続いた。これは若き胡潤の思うツボであって、富豪たちに財産状況を根掘り葉掘り聞く。そうして毎年ランキングを更新し、公表してきた。