「小山さんは以前、『体調が悪いときは、パチンコもジャンケンも負ける』とおっしゃっていましたよね。今日は小山さんも疲れている様子なので、別の日にしたらどうですか」
私は「それもそうだ」と思って、タクシーで家に戻ることにしたのです。
すると玄関先で、妻が血相を変えて立っていました。
どうやら、わが社の曽我都生子(ともこ)部長(当時課長)から夫の曽我公太郎部長に、「体調がよくないようだ。講義の最中におかしいところがあった」という連絡が届いたようで、「ちょっと休めば治る」という私の言葉には耳を貸さず、妻は病院の手配をした。
検査の結果、脳に先天的な疾患が見つかり、私は即入院。その後、手術を受けることに。もし、佐々木社長のひと言がなかったら……、そして、私が病院に行くことを拒んでいたら、今ごろここにいなかったかもしれません。
まれに見る奇形の「硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)」の手術はとても難しく、医師から「50%の確率で何らかの後遺症が残るかもしれない」との説明を受けました。
でも、私は迷わず、「やります」と答えた。
ふつうの人のパチンコの勝率は、せいぜい2割台、イチロー選手だって、打率は3割台です。だとすれば、「50%(5割)」は高確率と言えます。やらなければ損です。
これは、仕事にも当てはまります。
多くの社長は、リスクを怖れてチャレンジをしません。
「失敗する確率が50%もあるなら、やらないほうがいい」と考えます。
でも私は違う。
ましてや、会社経営は「命」と違ってやり直しがきく。たとえ失敗しても、もう一度立て直すことができる(私は今、何の後遺症もなく、ピンピンしています)。
プラスの事柄とマイナスの事柄があると、多くの社長は、マイナスの事柄に気持ちを奪われます。「失敗したら困るな、失敗したくないな」と考える。けれど、私は逆です。
「失敗はしたくない」と嘆いたところで、事態が好転することはありません。だったら、マイナスは目をつぶってやってしまったほうがいい。