スピード狂やポイ捨て喫煙者に
ルールを守らせた「仕掛け」

 他の例として、様々な「社会実験」がある。例えば、道路を法定速度で走るとメロディが聞こえるような「メロディロード」がそれだ。鳥取県の米子空港の側には、「ゲゲゲの鬼太郎」のテーマがかかる道路がある。それ以外にも、「となりのトトロ」のオープニングテーマ曲「さんぽ」がかかる道路など、探してみると日本にもかなりたくさんある。

 本来、ドライバ―は法定速度では走りたがらず、もっとスピードを出したいと思っている。つまり、ドライバーには法定速度で走ることに、インセンティブはない。一方、道路を管理している自治体にとっては、そこを法定速度で走らない車が多いがために、交通事故多発地帯ができてしまうので、ドライバーには自重してもらいたいと思っている。

 大抵の場合は、「危険!交通事故多発地帯!」などの看板を掲げたりするだろう。しかし、これはドライバーのインセンティブを変えるものではない。それをシリアスにとらえて、法定速度で走ろうとするドライバーはそう多くはないだろう。

 メロディロードは、道路に凹凸や溝を付けて、一定の速度で走るとタイヤとの接触音でメロディラインが聞こえるように作られたものだ。これは先の看板とは違って、ドライバーに「法定速度と守ろう」というインセンティブを(少なくともある程度は)与える。メロディを聞いてみたいからだ。

 したがって、看板には反応しないドライバーでも、速度を落とす可能性が高い。ドライバーはちょっとした楽しみがあり、自治体は結果として死亡事故を減少できる。つまりwin-winの関係を作れるのだ。

 こういった社会実験はいろいろなところで行われている。ロンドンで行われているのは、吸い殻のポイ捨て防止のための灰皿だ。喫煙者にとって、ポイ捨てしないのはマナー、とはいうが、それを守ろうという規範意識のある人は、ヨーロッパの都市部では少ない。それは、基本的にポイ捨てしないで、遠くにある灰皿に入れるという行動をとることにインセンティブがないからだ。

 ロンドンでは、あまりに多い吸い殻のため、清掃員が頭を痛めていた。そこで考え付いたのが「投票灰皿」だ。これは2つの透明な灰皿を投票箱のように置き、たまった吸い殻の量で優劣を決定するというものだ。

 例えば「世界一のプレイヤーは誰?メッシ?クリスティアーノ・ロナウド?」は効果抜群だった。サッカー好きの多いイギリスでも、喫煙層は特にサッカー好きだ。彼らがこんなお題を出されたら「ポイ捨てするより投票箱に入れる」というインセンティブが発生する。

 これにより、吸い殻のポイ捨ては激減した。清掃員も苦労が減った。