ツアーガイドの手腕に
日本企業は学ぶべき点もある

 しかし、こうした旅行代理店やツアーガイドたちを糾弾しても、格安ツアー問題はなくならないだろう。それよりも中国人たちが、日本の正確な情報を得られる環境整備をする方が先決だ。

 たとえば、中国人が大好きな「南部鉄器」。中国人向け免税店では何万円もするようなものが売られていて、産地証明がないから「中には、実は中国製も混じっている」とのウワサもあるほどだ。しかし日本橋に行けば、きちんと産地を明記したものがリーズナブルに売られていて、私の友人たちは大喜びで買っていた。爆買い客たちはツアーが好きなのではない。単に日本のことをあまりにも知らないだけなのだ。

 こうして大喜びで南部鉄器を撮影したものをSNSに投稿すれば、口コミはどんどん広がって行く。

「爆買いを呼び込むにはSNS対策」と焦った日本企業が、フォロワー数の多い中国人にお金を払って口コミをしてもらう、という対策を取っている例も見聞きするが、中国人の成長も著しい。少し前ならそれでも効果があっただろうが、今では「嘘くさい」と見抜く人が増えている。SNS対策などせずとも、「来てもらって感動体験をしてもらう」ことさえ心がけておけばよい。本物の感動がある投稿は、瞬く間に広がって行くものだ。

 その点で、日本企業は中国人のツアーガイドや免税店に学ぶべきことがたくさんある。というのも、彼らは多くの日本企業よりも「中国人が好むもの」をきちんと把握しているからだ。

 サプリの箱の大きさやデザイン1つとっても、中国人が「これは良さそう」と思うようなツボを良く押さえている。ツアー客がバスから降りた後、ガイドはすぐに免税店に入れさせず、まず店前で写真を撮るように勧めているのもそうだ。旅行先では何事も新鮮に見え、喜んで写真をSNSにアップしたがる中国人の特徴を上手に利用して、無意識のうちに免税店の認知拡大を手伝わせているわけだ。

 日本人が中国人を食事に招待するとき、つい「担々麺や餃子がある店の方が…」などと思わないだろうか?しかし、中国人が大喜びするのは北海道のカニであり、和牛なのだ。我が社がやっている日本の化粧品会社の中国人向け体験会でも、中国人たちは、日本企業側が「これは受けるはず」と思って紹介した商品にはあまり反応せず、最後に何となく見せた商品に目を輝かせて「40個欲しい!」と殺到したりする。

「売れるだろう」と勝手に判断するのは「押しつけ」にしかならない。中国人のファンを1人でもいいから作って、その人にたくさんの体験をしてもらって中国人に響くポイントを聞く。これこそが、爆買いマーケティングの基本中の基本だ。しかし、ここを怠って、代わりにヘタなマーケティングに大金をつぎ込む日本企業が散見されるのは非常に残念だ。