人間の命のように、
企業にも手入れが必要

 流通業ですと、平和堂の場合は創業者である会長も、二代目の今の社長もたいへんご立派ですからうまくいっていますが、一時は隆盛をきわめたヤオハンはすでにありませんし、西友も西武百貨店も名前は残っていますけれども経営主体としては変わってしまいました。日本のスーパー業界をリードしたダイエーも再建途上にあります。

 こうした状況は何も流通業に限ったことではありません。戦後の日本企業史全体を見わたしましても、戦後に起こり、現在も立派に生き残っている企業は非常に少ないわけです。しみじみ考えますと、企業の寿命も人間の寿命も同じようなもので、誕生して成長し、活躍して、やがて滅びていく。生まれたものは必ず死ぬ、興隆したものは必ず滅亡していくということ、これは世の真理です。

諸行無常は企業も同じ。だからこそ、経営者に求められるものとは?(写真はイメージです)

 古い言葉で「栄枯盛衰は世の習い」と言いますが、この世の中に永遠に存続するものなど存在しえないということは厳然たる真理です。そのように、この宇宙に存在するあらゆるものは常ならず、必ず変化をしていくのだということを、お釈迦さまは「諸行無常」という言葉で、説いておられます。

 ただし、長く生きたいと思って摂生に努めた結果、八〇歳、九〇歳、中には一〇〇歳近くまで生きられる方もあれば、不摂生をした結果、五〇歳、いや、もっと若くして亡くなる人もあります。

 そういう意味では、企業も永遠に発展し存在することはできないけれども、少なくとも人間の命と同じように手入れをし、摂生に努めていきさえすれば、五〇年はおろか、さらに五〇年、一〇〇年と続いていくだろうと思うわけです。

 平和堂も立派な創業五〇周年の記念式典などをされるようですが、会長も社長もこれを区切りにして、今からさらに五〇年、平和堂を成長・発展させ、創業一〇〇年を迎えられるように、手入れをしていこうと、お考えであろうと思います。