稲盛和夫が語った起業の「原点」とは――。京セラとKDDIという2つの世界的大企業を創業し、JAL再建の陣頭指揮を執った「経営の父」稲盛和夫氏。その経営哲学やマネジメント手法は世界中に信奉者を持つ。
『稲盛和夫経営講演選集』(第1~3巻)『稲盛和夫経営講演選集』(第4~6巻)発刊を記念し、「企業寿命と経営者の資質」について語った貴重な講演録を掲載する。
「企業寿命三〇年説」とは?
今日は、夏原平和社長から「ぜひ平和堂創業五〇周年に幹部社員にお話を」、というご依頼がありましたので出てまいりました。
『稲盛和夫オフィシャルサイト』
創業五〇周年、本当におめでとうございます。私ども京セラも再来年でちょうど創立五〇周年を迎えますので、平和堂のほうが二年ほど早く五〇年の節目を迎えられたことになります。
京セラは私が二七歳のときに始めた会社で、私はその頃より、企業を立派に成長発展させていくということはたいへん難しいことだと考えてまいりました。今から二〇年ほど前には、「企業寿命三〇年説」をもって、社内に警鐘を鳴らしました。
「どうも会社というのは、創業して三〇年ぐらいたつと、ガタがきて傾くのが普通らしい。京セラも、もうすぐ三〇周年を迎えるけれども、なんとしてもみんなで力を合わせて、傾かせないようにするどころか、さらに立派な会社にしていこうではないか」と、社員全員に緊張感と危機感をもってもらえるように話をしたのです。
私が心配しましたのは、戦後の日本企業の歴史がそのようなものであったからです。お歳を召した方はご存じでしょうが、戦争によって日本経済は壊滅的な打撃を受けました。しかし、闇市から徒手空拳で身を起こしたわれわれの先輩たちががんばって、日本経済を復興、発展させてくれました。
その中で、多くの有名な会社が起こりましたが、考えてみますと、そのうち三〇年以上命脈を保った会社は、そう多くないのです。