WEBサイトで割引クーポンを共同購入する新たなサービスが人気を博している。リクルートなど20社以上が相次いで参入するほどの熱狂ぶりだが、思わぬ落とし穴がありそうだ。

 これは「グルーポン系サービス」と呼ばれるもの。飲食店やエステサロン、レジャー施設などが、1地域に1日1品、割安な目玉クーポンをサイトに出品。店舗とサイトが定めた一定以上の人が応募した段階で取引は成立し、集まらなければ不成立となる。

 多くの企業が続々と参入した背景には、同事業を最初に開始した米グルーポン社が、創業わずか2年で年商321億円、利益40億円を超える驚異の成長を遂げたことがある。

 出品者からすれば、取引が成立した段階で手数料をサイトに支払えばいいから、効率的な広告効果が見込まれる。カード決済が基本だから、サイト側にとってもとりっぱぐれがないからだ。

 ところが日本では、サービスのスタートからまだわずか2ヵ月程度しか経っておらず、市場が未成熟であるがゆえに、問題が出始めている。

 例えばリクルートが7月21日のサービス開始と同時に販売した1つ目のクーポン。東京・池袋にあるレストランの割引クーポンで、通常4800円のコースに特別な演出、デザート、10%のサービス料の3つを加えた1万円相当のプランを、50%オフの5000円で提供するものだった。

 だが、じつはこれ、コース料理以外のサービスが通常5200円で提供されていたかどうかが極めて曖昧なため、景品表示法の「不当な二重価格表示」に該当する恐れがあるのだ。

 2つの価格を比較して割引率などを表記する際、比較基準となる通常価格について実際と異なる金額や、あいまいな表示をした場合は、不当な二重価格表示に当たるからだ。

 リクルートはこうした批判を受け、同日中に料理を8400円のものに変更、返金の受け付けも行うという慌てぶりだった。

 こうした杜撰な運営実態は、リクルートだけではなく、「明らかに通常価格を釣り上げているものが散見される」(関係者)という。二重価格は、2回繰り返せば刑事罰の対象となるから、軽く見てはいけない。

 クーポンとして商品券などの金券を販売しているサイトも問題になりそう。取引が成立してクレジットカードで決済した後、購入者が金券を換金したとする。もし、その購入者が返済不能となっても、金券はすでにないから回収できない。つまり、初めから現金を手にする目的で応募することができるというわけ。これは、いわゆるクレジットカードの「ショッピング枠現金化」に近い。

 さらに、クーポンの有効期限内に店舗が倒産しても、サイト運営会社が返金に応じるかどうか、利用規約などに明記されていないサイトも多い。

「今にも倒産しそうな飲食店のクーポンを掲載していることも少なくない」(あるサイト運営者)というから、購入者は安心していられない。

 グルーポン系サイトのなかには、すでに月商1000万円を稼ぎ出すサイトまで現れるほど。だが、こうした杜撰かつ無秩序な運営をしていれば、消費者の信頼を失いかねず、せっかくの新しいサービスも日本には根付かないかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)

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