「着メロ」「ニコニコ動画」のアイデアはどこから?
川村 弟子入りされているジブリの話が先になってしまいましたが、そもそも川上さんは20代でドワンゴを立ち上げて、日本を代表するIT企業に成長させてきました。なかでも大ヒットとなったのは「着メロ」や「ニコニコ動画」(以下ニコ動)だと思うんですが、そういった独自のビジネスを思いついたきっかけは何だったんですか?
川上 着メロはマーケットが大きかったんですよ。ドワンゴはネットのゲーム開発から始まった会社で、当時『釣りバカ気分』という7万人規模のゲームサイトがあって、大手の一つだったんです。
川村 もともとは大手ゲームサイトの会社だったわけですね。
川上 そうです。一方、着メロ業界を見ると5位のサイトでも、100万人規模を超えていた。しかも当時はカラオケメーカーしか着メロサイトを作れないというのが、携帯電話会社の暗黙のルールでした。だから、着メロサイトを作る村に入ることだけ許可してもらえれば、隅っこの方で細々とやるだけでも幸せに暮らせるなと思って始めました。そもそも、志が低いんです(笑)。
川村 川上さんは戦いを始めるときに「戦う場所」から決めますよね。普通はみんな「戦い方」を一生懸命に考えるのに。釣りで言うなら、釣り場を選ぶセンスがずば抜けている。
川上 一番手が嫌いなんです。好物は二番手。世間では僕もドワンゴも一番手のパイオニアだと思われているのかもしれませんが、冒険とか大嫌いなんで。
川村 ニコ動はどうやって生まれたんですか?
川上 着メロが当たって会社的にも余裕ができたとき、初心に戻ってネットやオタクといわれる人たちの居場所を作りたいと思って業界を見渡したら、グーグルの「機械にできることは全部やらせよう」というポリシーを、みんなが後追いしていた。だから、逆に人の手間が必要なサービスで、人間が参加するニコ動に行き着きました。答えを探すエンジンではなく、答えを収束させないエンジンとして。
川村 答えを収束させない、というコンセプトは素晴らしい発明ですね。ちなみに今、会員は何人くらいなんでしょうか?
川上 会員自体は4700万人くらいで、月間のユニークユーザーで言うと800万人くらい。課金しているユーザーになると230万人くらいじゃないですかね(※全て数字は2015年5月の対談時点のもの)。
川村 日本ではYouTubeに拮抗(きっこう)する存在としてニコ動がありますが、海外でニコ動のようなオリジナルな動画サイトが存在する国はあるんですか?
川上 フランスの「デイリーモーション」と中国に「Youku」というのがあります。あとは韓国くらいだと思います。